Domingo 記事
国内外を巡回し大好評を博している展覧会がとうとう札幌上陸!
会期中一部展示替えがあるので、後半にもう一度見に行こうと即決
2023年の国立工芸館(石川県)での開催以降、アメリカ・ロサンゼルスや日本各地を巡回し大好評を博している注目の展覧会「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」が、札幌・北海道立近代美術館にやってきました!人間国宝から気鋭の若手まで20名の参加作家は、ポケモンを遊びながら育った人もいれば、本展を機に初めてゲームに触れた人も。ポケモンが作家の創造力を刺激し、誰も見たことのない工芸やポケモンが立ち現れる様子を、ポケモンファン歴30年のチサトさんと一緒に目撃してきました。
会場風景
本展はポケモンの姿かたちからしぐさ、気配までを呼び起こした「すがた―迫る!」、進化や交換、旅の舞台、効果抜群のわざなどゲームの世界観を表現した「ものがたり―浸る!」、器や着物、装身具に誘い込まれたポケモンを楽しめる「くらし―愛でる!」という三つの構成。札幌では新作2点が追加され、金工、木工、陶磁、漆工、ガラス、染織の作品約90点というボリュームです。
描かれた500匹を超えるポケモンを全部見つけたくなる魅惑の壷
葉山有樹《森羅万象ポケモン壷》(2022年・個人蔵)
会場に入って最初に出会うのは、陶芸家・葉山有樹さんの《森羅万象ポケモン壷》。無数の植物と500匹を超えるポケモンが描かれた本作について、チサトさんは「初日に子どもと一緒に見にきたのですが、描かれているポケモンを発見するのが楽しくて、しばらくこの壷から動けませんでした」と話します。
下書きなしのフリーハンドで描かれたポケモンや植物の文様
図録で紹介されている制作過程を読むと、900℃で素焼きしたボディのざらついた吸水性も高い面に緻密な文様を描くには、恐ろしく高度な技術を要するのだそう。剣先と筆で盛り上げた白線や点描、そして金彩による繊細な立体感や見る角度によって変化する輝きにうっとりします。「葉山さんだけで一生見ていられる」とチサトさん。
葉山有樹《球体「万花彩(ゼルネアス 生命の循環)I〜Ⅲ》(2024年・個人蔵)
《球体「万花彩(ゼルネアス 生命の循環)I〜Ⅲ》で描かれるのは、2013年に発売された『ポケットモンスター X』に登場する伝説のポケモン「ゼルネアス」の「頭のツノが七色に輝く時、永遠の命を分け与えると伝えられている。樹木の姿で1000年眠り復活する。(『ポケットモンスター X・Y』より)」というストーリー。
チサトさん曰く「ゲームのゼルネアスの戦闘シーンで『角が光る』という描写はあるのだけど、そこがクローズアップされて描かれることはないので、ゲームをしていた人にこの作品は刺さると思う」。《森羅万象》と《万花彩》シリーズはマグカップとコースターが特設ショップで販売されているので、そちらも要チェックです!
金属、土、木などから呼び起こされた三次元のポケモンと出会う喜び
金工作家・吉田泰一郎の《サンダース》。七宝焼の眼球も美しい(2022年・個人蔵)
本展の見どころの一つとして、思いがけない物質から、新しい質感を持って現実世界に召喚された三次元のポケモンと出会える、ということがあります。金属、土、木などから呼び起こされたポケモンたちの唯一無二の佇まいは、とても魅力的です。
桝本佳子《信楽壷 / ファイヤー》(2022年・個人蔵)
例えば、桝本佳子さんの《信楽壷 / ファイヤー》は、かえんポケモンのファイヤーがモチーフ。「窯の炎の中から、ほのおタイプのポケモンが生まれるところにグッときます」とチサトさん。温かみある信楽焼の発色や土肌、美しく燃え上がる炎の造形、そして春の気配をまとった花文と、何重にも味わいのある作品でいつまでも眺めていられます。
福田亨《共鳴》は、北海道会場で加わった新作(2026年・個人蔵)
天然木の持つさまざまな色や木目を組み合わせて絵柄をつくる木象嵌を立体造形として展開する福田亨さんによる《共鳴》は、ビブラーバがモチーフ。羽を激しく振動させて超音波を出し、コミュニケーションを取る様子が、これ以上ないくらい表現されていて格好良い...!「ビブラーバはあまりグッズ化されておらず、これをピックアップしてくれたか!という喜びがあります。レアな色違いもいて嬉しい」とチサトさん。(ちなみに他のお客さんも色違いに反応していました)
色違いを見つける、意味を読み解く...作家の仕掛けに応える楽しさ
須藤玲子《ピカチュウの森》(2023年・個人蔵)
ピカチュウを象った900本の刺繍レースで構成された《ピカチュウの森》は、野生のピカチュウがたくさん登場するアニメ『ピカチュウのもり』からインスピレーションを得た作品。アニメの「川に落ちたピカチュウを仲間のピカチュウが協力して助けるシーン」をイメージしたレースが1本だけあり、色違いのピカチュウも隠れていて、無茶苦茶かわいいです。探してみてくださいね!
池田晃将《未知文黒御影茶器》。この茶器は超絶格好良すぎます…(2022年・個人蔵)
伝統的な螺鈿技法を基盤に独自の表現を展開する池田晃将さんによる《未知文黒御影茶器》は、古代文明の遺跡などに生息するアンノーンがモチーフ。「アンノーンにはアルファベットと疑問符、感嘆符という28種類の姿があり、金色のアンノーンを読むとゲームのある場面に出てくる言葉になるんです。
わかったときに『きちんと伝わってるよ!』ってなりました」と言うチサトさん。色違いや隠された意味など、作品の随所に作家が忍ばせた仕掛けに気付き、応える楽しさは、本展ならではかもしれません。
植葉香澄《星氷烈文ミミッキュ》
今回、世界中の幅広い世代から愛されるポケモンを通して工芸を見ることで、その高度な技術や奥深さをより体感できた気がします。約90点ある作品のほんの一部しか紹介できていませんが、ポケモンファンはもちろん、ポケモンに親しんでこなかった自分のような人にもぜひ足を運んでほしいです。各作家の制作エピソードや技法について解説された図録を読むと一層楽しめるので、こちらもぜひ!
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©池田晃将, 植葉香澄, 須藤玲子, 葉山有樹, 福田亨, 桝本佳子, 吉田泰一郎
取材協力:得丸知里
ポケモン×工芸展 美とわざの大発見
■開催日時:2026年4月25日(土)~6月21日(日) 9:00~17:00(入場は16:30まで)
※前期:4月25日(土)~5月24日(日) / 後期:5月26日(火)~6月21日(日)(一部展示替予定)
■料金:一般 1,700円(1,500円) / 高大生 1,000円(800円) / 小中生 600円(400円)
※()内は前売券、日時指定券および10名以上の団体、リピーター割引、アートギャラリー北海道相互割引料金
■休館日:月曜日(5月4日を除く)、5月7日(木)
■会場:北海道立近代美術館 (札幌市中央区北1条西17丁目)
「ポケモン×工芸展 美とわざの大発見」の詳細や地図情報はこちら
ライタープロフィール
ライター 松田 仁央
2007年から2010年まで「WG」というフリーペーパーを発行しつつ、2010年からフリーランスのライターとして活動。舞台芸術と美術が特に好きです。2002年頃からギャラリー等で絵画を中心に作品を購入しています。ここでのレポートが、誰かが「自分の一枚」に出会うきっかけになったら嬉しいです。
