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北海道へ移住したMAYA MAXXさんが感じた自然の美しさ

『エゾシカ』の表紙原画
全国各地で個展を開催するほか、テレビ出演やワークショップの開催など、多彩な活動で知られたMAYA MAXXさん。2020年に東京から引っ越して岩見沢市美流渡地区にアトリエをつくってからは、まちに絵を描く取り組みや、閉校した旧美流渡中学校の校舎を使った展覧会などを開催。2024年11月には、野生動物を身近に感じる美流渡地区での暮らしから生まれた絵本『エゾシカ』が、福音館書店の「こどものとも」シリーズから刊行されました。
絵本の折り込みふろくにある「作者のことば」には、岩見沢での暮らしについて「夏が短いせいか、植物、虫、動物たちが皆、時を大事に、ただただ自らの役割を果たすために全力を尽くして生きていることに感動します。そんな中で、都会では考えられないほど身近に野生動物がいて、見かけた時は大人の私でも喜びと驚きに震えます」と綴られています。
エゾシカとの出会い

彼女が最初に出会ったキタキツネ
窓の向こうからのぞいてくるエゾリスや、空を悠々と飛んでいくオオワシ。そして札幌でも目撃情報が相次ぐ(できれば出会いたくない)ヒグマ。

会場風景。中央に展示されている木の作品は、2020年に制作された《いままで見えなかった風景》
そして、エゾシカ。

息を呑む作者の気持ちが伝わってくるような、エゾシカとの出会いの場面(写真提供:3KG)

MAYA MAXXさんを魅了した、立派な角
絵本の中で、オスの角が毎年生え変わることにとても驚いたことが語られているのですが、これは意外と知らない人が多いのではないでしょうか。(私も初めて知ったときは驚きました!)エゾシカの角は4〜5月に抜け落ち、すぐに新しい角が生え始め、秋(繁殖期)までに1m近くまで成長するのだそう。ちなみに満1歳では枝分かれせず、2〜3歳から枝分かれするのだとか。
言葉が添えられている絵本も素敵だけれど、MAYA MAXXさんの心を打ったエゾシカの「生」がダイナミックに描かれた原画は、言葉以上に語りかけてくるものがあるように思えます。自然は過酷だけれど、彼女の描く動物たちは瞳がキラキラと輝いていて、今この一瞬を全力で生き抜いている。展覧会に訪れたお客さんも、一枚一枚の絵と対話するようにじっくりと観ている人が多かったです。
作品と観客との出会いはずっと続いていく
さらに最後には、岩見沢市立メープル小学校の特別支援学級に通う笹木いち花さんが描いた『エゾシカ』も展示されています。メープル小学校でMAYA MAXXさんがワークショップを毎年開催していたご縁で『エゾシカ』を寄贈したところ、いち花さんが絵本に出てくる動物たちに興味を持ってその姿を描き、それにMAYA MAXXさんがとても感銘を受けたことから一緒に飾ることになったのだそうです。
MAYA MAXXさんが絵を通して表現した驚きと喜びが、いち花さんの心の中を通って、いち花さんの驚きと喜びとして表現されているようで、本当に素晴らしいのでぜひ会場で見てみてください。

グッズも充実。左上に写っている『エゾシカ』表紙原画のキャンバスプリント(税込18,000円+送料)がほしい!
MAYA MAXXさんは2025年1月9日に病気のため亡くなってしまったのだけど、彼女が残した作品はずっと生き続けて、これからも新しい観客との出会いを重ねて行くのだと思います。動物たち、とても愛らしいので、ぜひ見に行ってみてください。

会場外に設けられた書籍コーナー。『エゾシカ』を入手するならここが一番便利
庭ギャラリーの入っている庭ビルには、D&DEPARTMENT HOKKAIDO by 3KG、絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」、日によって料理人が変わる「庭キッチン」などが入っているので、展覧会と合わせて楽しんでくださいね!
みんなと絵本とMAYA MAXX
■開催日時:2025年5月31日(土)~6月21日(土) 11:00~19:00
■会場:庭ギャラリー(札幌市中央区大通西17丁目1−7 庭ビル2階)
■料金:入場無料
■休館日:日曜日・月曜日
「みんなと絵本とMAYA MAXX」の詳細や地図情報はこちら
ライタープロフィール
ライター 松田 仁央
2007年から2010年まで「WG」というフリーペーパーを発行しつつ、2010年からフリーランスのライターとして活動。舞台芸術と美術が特に好きです。2002年頃からギャラリー等で絵画を中心に作品を購入しています。ここでのレポートが、誰かが「自分の一枚」に出会うきっかけになったら嬉しいです。