Domingo編集部
1. 沼田町ほろしんの森に自然学校が誕生?!
2. 沼田町の雪の上でも!みんなで組み立てるダンボールハウス『DAN DAN DOME(ダンダンドーム)』
3. 【ほろしんの森 GUEST 01】極地建築家 村上祐資さん
4. 『沼田町まるごと自然体験プロジェクト』に参加しよう!
1. 沼田町ほろしんの森に自然学校が誕生?!
夏にはほたるが命を燃やし、冬には最大積雪深が170cmと多くの雪が降る、大自然を感じられるまち、沼田町。また、かつて存在した3つの炭鉱の歴史を発信したり、富山県から伝承された夜高あんどん祭りの開催、冬に無尽蔵に積もる雪を公共施設の冷房や米・野菜の長期保存などに使う利雪の取り組みなど、まちの資源を活かす活動を積極的に行ってきたまちでもあります。
そんな沼田町の豊かな魅力と新たな発想を結びつけ、子どもも大人も関係なく1年中森であそべる「自然学校」づくりが着々と進んでいます。
ちょうど1年前、Domingoでも沼田町の自然学校づくりについてご紹介していました。
■沼田町の森をあそび尽くす!みんなの夢が詰まった「自然学校」づくり
https://domingo.ne.jp/article/5065
自然学校でやってみたいことを1枚にまとめたわくわくな絵。その構想は着々と進んでおり、今ほろしんの森には、なにやら面白そうな人がゲストとして来てくださったそう!
ほろしんの森、ゲストとしてご紹介するのは、『DAN DAN DOME(ダンダンドーム)』をつくって使うワークショップを開催した、極地建築家の村上祐資(むらかみ・ゆうすけ)さんです。『DAN DAN DOME』とはなんなのか、そして『極地建築家』という聞きなれない肩書きを持った一風変わった建築家の村上さんって一体どんな方なんでしょう?
沼田町の雪の上でも!みんなで組み立てるダンボールハウス『DAN DAN DOME(ダンダンドーム)』
南極やヒマラヤなど数々の極地において人の営みを踏査してきた極地建築家・村上祐資さんがほろしんの森で行なったのが、DAN DAN DOME(ダンダンドーム)をつくるワークショップです。
DAN DAN DOMEは、村上さんが設計して包装容器を手がける企業と一緒に開発した組立式のダンボール製ドームテント。紙製のダンボールでありながら、耐水処理が施されているので屋外での使用も可能な優れものです。
大人や子どもが一緒になって6~8名集まって協力すれば組み上げることができるよう設計されたドームテントで、フェスやキャンプなど屋外レクリエーションでの使用から、避難所でのプライベート空間の確保など非常時にも活躍します。
「使い捨て」を前提に素材や形が設計されているから、お絵かきをしたり、穴を開けてみたり、飾り付けをしたりなど、自由に使えるのも特徴です。
ほろしんの森では、10月と2月の2度、DAN DAN DOMEをつくって使う実験的なワークショップを行いました。
2度目は真冬の2月。豪雪地帯、かつ寒さの厳しい沼田町はある意味での『極地』。雪の重みにどれほど耐えられる?どうやったら凍る?どんな風に使える?など実験を重ねました。
極地建築家 村上祐資(むらかみ・ゆうすけ)さん
ほろしんの森でDAN DAN DOMEのワークショップを行ってくれた村上さん、一体どんな方なのでしょうか?
村上さんはこれまで、南極や富士山頂、ヒマラヤ、さらに『火星実験生活Mars160』と言われる火星での居住生活を模擬的に再現する実験に参加。『極地』と呼ばれる厳しい環境で計1,000日間以上を過ごし、極地における人々の暮らしや生活にとことん向き合ってきました。
そんな変わった経歴を持つ村上さんに、お話をお聞きしました。
人間が生きて暮らしていく、その根本となる部分が知りたかった
『極地建築家』という肩書きから、小さい頃から冒険が好きで宇宙へ憧れを持っているのかと思いきや、小さい頃は雪まつりの滑り台も怖くて泣きながら階段の方から降りるような、怖がりな子どもだったのだそう。
宇宙への憧れもそれほどなく、小さい頃から人々の暮らしに興味があったという村上さんが『極地』や『宇宙』と出会ったのは、大学生の頃でした。
「建築を学んでいた大学生の頃にたまたま開いた雑誌で、アリゾナで男女8人の研究者が完全に閉じこもって2年間暮らす『バイオスフィア2』という実験生活の存在を知って。巨大な密閉空間の中の人工生態系のなかで人間は生存できるのか、そして人間の生活と地球環境の関係性について実験するものでした。
僕が建築を学ぶ中でやりたかったことは、かっこいい建築をつくることではなく、人間が生きて暮らしていく、その根本となる部分を探ること。この雑誌との出会いをきっかけに、今後人間が移り住むかもしれない『宇宙』に対して、人間の暮らしの根源となる部分を建築の側面から考えたいと思うようになりました」
地球にいるうちに、火星で起きうる「忘れ物」を洗い出して潰しておく
『宇宙での暮らしを建築から考える』ーそんな取り組みをしている所は国内にはなく、世界にもほぼありませんでした。一筋縄では行かない道のり、うまく行かないことがたくさんありながらも、人間の暮らしの根源を知りたいという強い思いで行動を続け、南極観測隊員に選出。南極という極地での生活を自ら経験しながら、そこでの人間の暮らしを観察します。
その後も、ヒマラヤのベースキャンプで登山隊に帯同したり、富士山頂の元測候所で過ごすなど、極地で暮らすという経験を積み重ねます。
そんな中、『国内のプロジェクトで起こることは国際プロジェクトでも同じように起きるのか、国の違いによって暮らしや思考に違いが生まれるのか』ということに関心を持った村上さんは、『火星実験生活』というプロジェクトに応募。すると、トップで選出され、副隊長として参加することになりました。北極・アメリカのユタ州の2箇所に模擬基地を持つ団体が主催している実験で、ユタ州の方に80日間、北極の方に80日間、合わせて160日の滞在をするというプロジェクトでした。
「『火星実験生活』という取り組みが面白いと思ったのは、地球にいるうちに火星で起きうる問題を洗い出しておくという視点です。向こうで『お醤油忘れた!』と気づいても買いにいけないわけで、忘れ物がないように今のうちに潰しておけるという意味で、実践的で面白いなと」
しかし、いざ参加してみると『忘れ物を洗い出しておく』という側面より、『うちは先行して宇宙への取り組みをやっている』というアピールの側面が強かったのだと言います。主催者側も参加者側も『うまくいったこと』だけに着目し、『うまく行かなかったこと』の改善にはなかなか目が行っていなかった。こんなことをしてたら、いつか来る宇宙での生活を良くしていけない、そう考えた村上さんは、行動に出ます。
「本当の意味で忘れ物を洗い出す機会を僕が作ろうということで動き出しました。まずはユタ州の模擬基地の2週間の枠を押さえ、僕が主催側で模擬実験を行ったんです。そして、毎回アメリカに行けないので、日本でプラットフォームが作れないかと考え、退役した元南極観測船『SHIRASE 5002』の一区画を借りて模擬実験を行いました」
クルーだけでなく、周りの人たちとの関係性もケアする
自ら志願して実験に参加し心の準備ができているクルーは、苦しいこと、不便なことがあっても、その不自由さすら楽しめる気持ちを持っている。しかし、その家族は準備ができていないということに、村上さんは注目します。
「宇宙ミッションって、下手に外との連絡が取れてしまうんです。だから、クルー自身がまっすぐ立てていても、クルーの家族がブレてしまうと連絡を通してクルー自体もあたふたしちゃうんですよね。地上管制官・ミッションサポートの人たちとの関係でも同じ構図が見えて。
今なら多くの人にわかってもらえると思うのですが、『リモートでできないこと』の究極版なんです。ちょっとしたかけ違いが、フォローできないままずーっと続いていくっていう。暮らしを営む上で、離れた人たちとの連携をどう取ればいいのかといったところにも可能な限り着目していました」
建築とコミュニケーションのプロセスを設計する
そんな小さな掛け違えは、特別なミッションの中だけではなく、人間が集まる場所には起こるもの。それは例えば、避難所でも起こることです。
建築という行為の中にコミュニケーションのプロセスを合わせて設計したのが、DAN DAN DOME(ダンダンドーム)でした。
「避難所でヒアリングをすると、自主的に『掃除当番こうしましょう』『ゴミ捨てこういう風に回しましょう』と自主的にやる避難所と、行政の人たちがきたら『トイレ汚れてたわよ』と行政にお任せという姿勢の避難所の、大体2パターンに分かれるんですが、ほとんどが後者の方です。
でも避難所ってランダムに人が集まっているはずだから、最初は違いがないはずなんです。ここを二分するのって、初動の違いなんですよね。みんな心も体もこわばってる状態で集まっているからどうしても硬直化してしまうのですが、誰か1人でも『できるところからやってみようよ』と声を掛ける人がいると、みんなわらわら動き出す。だけど、逆に初動で誰かが黙ってやってあげちゃうと、他の人たちはやってもらうことが当たり前、他人任せになってしまうんです」
その後の円滑なコミュニケーションを作り出す初動を、ドームテントを組み上げる行為とともに作り出すのがDAN DAN DOMEです。
組み立てる時に参照するガイド『DAN DAN GUIDE』は程よくわかりにくく、そして組み立てには複数名が必要になるような大きさにするなど、DAN DAN DOMEを完成させるためには他の人たちとの会話や助け合いが必要になるように、仕組まれているのです。
このDAN DAN DOME、新入社員研修に使うことを検討している会社もあるのだとか。グループの中で誰がどんな役割を果たしているのかがわかってしまうというDAN DAN DOME、1度試してみてはいかがでしょうか?
■村上祐資さんについてもっと知りたくなった方は、村上さんが代表を務める『FIELD assistant』が配信するポッドキャスト『ラジオネイティブ』もぜひお聞きください。
☞よむラジオ https://bit.ly/3CUD0uA
☞きくラジオ https://apple.co/3KXBYAr
■DAN DAN DOME
https://dandandome.com/
『沼田町まるごと自然体験プロジェクト』に参加しよう!
ほろしんの森では、DAN DAN DOMEの他にも人をとってもわくわくさせてくれる人やイベントが盛りだくさん!
『沼田町に行ってみたい』『プロジェクトに関わってみたい』と思った方も多いのではないでしょうか?
ぜひ森あそびサポーターになって沼田町まるごと自然体験プロジェクトに参加してみてください!
森あそびサポーター(通称「森サポ」)になると、自然学校に関わるワークショップやイベントの情報がメールで届くので、気になるイベントに参加することができます。
また、遠隔地からも参加できるオンライン配信イベントが開催されることもありますので、どこにお住まいでも、少しでも気になった方はぜひ森サポの仲間入りをしましょう!
森あそびサポーターとは?
ほろしんの森であそび、作り上げていくメンバーのことです。
沼田町内の方に限らず、全道、全国のどなたでも登録出来ますし、年会費や参加強制のイベントはありませんので、気が乗ったときにお気軽に参加できます。
登録だけでも、と思われた方は沼田町まるごと自然体験事務局(numatashizen@gmail.com)あてにお名前、ご年齢、住所、メールアドレスをご記入のうえ、メールください。
活動にかかる様々な情報を発信していきます!
■沼田町まるごと自然体験プロジェクト【北海道沼田町】Facebook
https://www.facebook.com/hokkaidonumatanature
■森あそびサポーターについて
https://www.facebook.com/hokkaidonumatanature/posts/493542638705301
画像提供:村上祐資さん、沼田町