Domingo編集部
地元を心から愛し、そして地元から愛される。そんな地域密着のローカルメディア「モトクラシー」を制作するみなさんにお話を聞きました。
「モトクラシー」の作り手
「モトクラシー」を作るのは、旭川市の隣町、東川町に事務所を構える旭川通運株式会社 観光企画課のみなさん。モトクラシーは旭川駅から日帰りで行けるエリアの主にツーリズムに関する情報を紹介するローカルメディアで、フリーペーパーの取材・制作・配布だけでなく、Webサイトの制作・更新、イベント、ツアーまでこの3名の手で行われているというから驚きです。
「モトクラシー」誕生のきっかけ
林さんが「モトクラシー」という言葉を作ったのは2015年のこと。ここには、“地元で暮らしている方々(ジモトグラシ)と、地元の人でも知らない穴場(灯台モトクラシ)を紹介していきたい。”という思いがこめられています。
体験やお店など地域の情報を紹介する際、その「内容」だけでなく「ひと」にフォーカスを当てるのがモトクラシー流なんだそう。
だから観光プランも「ネットで販売しておわり」ではなく、スタッフとして現地に行き自らお客さんを案内しています。
そんな中で、必ずと言っていいほど質問されるのが
「どこのレストランがおいしいですか?」「どんなお土産物があるの?おすすめは?」
といった街の情報でした。
「対応したお客さんには直接ご紹介していましたし、もっと言えばお昼を一緒に食べに行ったり、お土産物屋さんまで一緒に行って「このチーズおすすめです!」などとご紹介していました。
しかしモトクラシーとして直接関わることができるお客さんの数は限られているため、そんなに聞かれるんだったら紹介できるものがあればいいよねという話が出たんです。」
さらに、時を同じくしてスキー場までのシャトルバスの運行管理の業務が始まりました。車内には、飛行機にある「機内誌」のようなインフォメーションが何もなかったんだそう。
「網棚に何かあれば、スキー場に行く人が必ず手に取ってくれるだろう、もしかしたらそこに広告効果も期待できるんじゃないか、そんなことを思いつきました。」
『それならお客さんに地域のことを紹介できるようなものを作ってみよう』と2年前の冬に始まったのが、今回大賞を受賞したフリーペーパーでした。
”盛らない”ことにこだわる
モトクラシーを作る上で大事にしていること、こだわりはなんですか?
河野桃さん
「私がモトクラシーを作る上でこだわっていることは”盛らない”ということです。
言葉を尽くせば、地域に対する期待値を上げることって正直簡単だと思うんですよね。
ただやっぱり私たちはあくまでもお店の人とかコミュニティ、味、体験の内容をありのままに伝えたいと思っているので、決して”足さずに引かず”にということを意識しています。
読んだ人がそこに行った時に、そこにそのまま存在している・体験できる・味わえるよう、誠実に伝えることにこだわって作っています。写真もいくらでも調整して盛ることはできますが、なるべく本来の色で撮影することも意識しています。
小川茉奈恵さん
「ターゲットを女性の方に設定しているので、”シンプルで可愛い”北欧デザインを参考にして作っています。そこにイラストをプラスすることで、かわいさや親しみやすさをよりパワーアップさせていることもこだわりの1つです。
デザインするにあたって良かったなと思うことは、3人とも好きなデザインがほぼ一緒だったこと。だからこそデザインにこだわりをもって作っています。」
林和寛さん
「“嘘をつかない”ことを大事にしています。思っていないこと、知らないことを書かない。
例えばプロモーション動画をつくる時には、地域を訪れた時に”実際に体験できないもの、見ることができないもの、会うことができないひとなどは使いません。
だから、モトクラシーは天気が悪い日でも撮影するし、モデルさんには出てもらわないし、ドローンで撮影した映像は使いません。
いかに自分が体験できるものを自分の言葉で伝えるかというところに信念を持っているので、来てくれたお客さんの体験は、期待値以上になることはあっても、期待値以下になることはことはないんです。そういう嬉しい出会いや発見が無ければ繰り返し来てくれることはないんですよね。
リピーターは”ひと”につきます。どんなに美味しいものでもどんなに綺麗な景色でもどんな素敵なデザインでもそこに”ひと”がいないと、ファンはつかない。観光のガイドをやっていた自分の経験をもとに、出版でも同じスタイルをとっています。」
”観光客目線”で始めたモトクラシーは、2年経った今、観光客よりも地元の方のほうが見てくれているのだそう。
自分たちの言葉で愛を持って地元のことを伝える姿勢が地域に伝播し、地域内にモトクラシーのファンがどんどん増えているのだと感じました。