Domingo編集部
北海道の魅力が詰まった作品が勢揃い!「北海道遺産フォト&短歌チャレンジ2024」入賞作品発表
「短歌部門」入選
山邊 菊代
線路にはヘッドライトがホームにはランプが灯す小樽の雪夜
■題材
小樽の鉄道遺産
■本人コメント
初めて小樽駅に行ったときは真冬で、とても美しく感動しました。
■審査員講評
線路とホームの明かりの比較が鮮やか。それぞれの色の違いまではっきり見えてくる。"
松下 弘美
ジャズ、ソウル? ヒップホップかR&B? 石狩川に鮭踊りたる
■題材
石狩川
■本人コメント
石狩川を遡る鮭の迫力には圧倒されました。
■審査員講評
川に鮭が踊る風景を様々なリズムに見立てる発想がよく、またハネた日本語のリズムが踊るさまに噛み合っている。
山本 明
函館の始発電車の軋り音坂の下より厨にとどく
■題材
函館西部地区の街並み
■本人コメント
十字街の電車を見下ろしているときに詠みました
■審査員講評
厨というプライベートな空間に電車の音というパブリックな音が届いてくる情景が、映像的で鮮やか。
松田 なごみ
トドワラのシマエビ漁の打瀬舟野付の霧にかすむ舟影
■題材
野付半島と打瀬舟
■本人コメント
砂嘴に囲まれた湾に浮かぶ帆掛け舟は野付の風物詩として知られている。
■審査員講評
堅実なリアリズムの歌。トドワラや野付といった具体性が歌に奥行きを持たせている。漢字が続きすぎる点は難点。
麻倉 遥
舳先より二手に裂ける流氷よ流星群をわれら率いる
■題材
流氷とガリンコ号
■本人コメント
オホーツクブルーの海と流氷に、宇宙の旅を想いました。
■審査員講評
流氷から流星群への展開のさせ方にスケールの大きさを感じさせて良い。神話的な雰囲気がある。
森山 高史
円柱を数えてドームの先へ出るサハリンの風どこかに受けて
■題材
稚内港北防波堤ドーム
■本人コメント
稚内を旅したときの経験です
■審査員講評
風を通じてサハリンへの想像の範囲を拡張させることができている。
本澤 さえ子
まだ耳にアイヌの歌のやわらかさ神居古潭に鈴の音響く
■題材
アイヌ口承文芸
■本人コメント
学生時代、旭川でアイヌの方に歌を歌って頂く機会があり、いまだに耳に残っています。年配の女性の優しい声でした。
■審査員講評
歌のやわらかさと「鈴の音」を重ねたことで、誰の耳にもその雰囲気が再現できるような作りにしている。
外丸 幸子
夫とゆくガンガン寺の鐘の音の 祈りのはじめ祈りのをはり
■題材
函館西部地区の街並み
■本人コメント
夫と北海道に行ったときに美しい教会の雰囲気と北海道の広大な自然のイメージがとても神々しかったです。
■審査員講評
「夫とゆく」は必ずしも要らない部分だが、ガンガン寺から下の句の「はじめ」と「をはり」への忙しないスピード感へとつなげているところが巧み。
mokume_88
ゆっくりと曲がる市電に身を任せハローワークに通う七月
■題材
路面電車
■本人コメント
普段は地下鉄で移動することが多く、私にとって路面電車は「ハローワークに通う時に乗るもの」です。路面電車に乗っていると、大きく曲がる時には運転手さんがアナウンスをしてくれます。気遣いと優しさを感じながら、この先の不安と希望を抱えて、ハローワークに通っている際の景を詠みました。
■審査員講評
市電沿いにある施設としてハローワークを選んだことでドラマ性が演出できている。
真朱
冷房のない市電から札幌の秘める白さを想う8月
■題材
路面電車
■本人コメント
今年の夏に札幌を旅行して初めて市電に乗り、冷房のない車両に驚きつつ、白い雪の季節のほうが長いこの街に想いを馳せて詠みました。
■審査員講評
「秘める白さ」の神秘性が魅力的。冷房がないことを「白さ」と対比するところが見事。
河岸 景都
過ぎてゆく時代を知ってメダリオン、ただ来る人と去る人がいる
■題材
開拓使時代の洋風建築
■本人コメント
以前清華亭を訪れた際に見た、白い天井飾りが強く印象に残っています。時代が変わりゆく中で変わらずにあるものの偉大さや寂しさ、美しさに心を向けました。
■審査員講評
下の句の叙情的なフレーズを、「メダリオン」でうまく象徴化させている。
wakkochan25
あの青を越せずにいるよ君の目にスパンコールの水面が揺らぐ
■題材
積丹半島と神威岬
■本人コメント
きらっ、きらっと弾むような輝きと、空まで続く積丹ブルーのグラデーションが忘れられません。
■審査員講評
キラキラとした光の描写の仕方が印象的。「あの青」という表現を放置せずしっかり下の句で回収してくれるのも嬉しい。
wakkochan25
らしさってあればあるほどいいよねと語る君と食べるマトン
■題材
ジンギスカン
■本人コメント
羊肉らしいコクを味わえるマトン。これからの食卓も、ジンギスカン鍋のように、まあるく盛り上がりますように。
■審査員講評
定型から少し外れているが、興味深い会話の途中を切り取ったような作り方が面白い。
fumi_acfy
霧雨の中でカヌーは点々と傘傾ぐごと川面を滑る
■題材
天塩川
■本人コメント
天塩川について詠みました
■審査員講評
点々としたカヌーを「傘傾ぐごと」とたとえるところが新鮮。ダイナミックな印象が生まれている。
fuso_aeroace
はつなつのカムイミンタラ歩きのち友が待ちたる見本林へと
■題材
三浦綾子記念文学館と外国樹種見本林
■本人コメント
6年前に三浦綾子作品に魅了され、定期的に旭川を訪れるようになりました。山歩きを趣味としていて、旭川を訪れる度に遠く見かける大雪山の勇姿に惹かれ、いつか歩いてみたいと思っていて、ようやく今年にその念願を果たすことが出来ました。その時のことを詠んだ歌です。
■審査員講評
「歩きのち」が省略しすぎな印象もあるが、「見本林」という語を持ち出してきて収めるところで神話の世界から現実へと降りてくるようで面白い。