『初音ミクシンフォニー』10周年!札幌初公演を前にキーパーソンが語るこれまで、そしてこれから|Domingo

『初音ミクシンフォニー』10周年!札幌初公演を前にキーパーソンが語るこれまで、そしてこれから

初音ミクをはじめとしたバーチャルシンガーの楽曲をフルオーケストラで味わえる「初音ミクシンフォニー」が、開催から10年という節目に、初の札幌公演が開催されます。(2月11日、火・祝)。2016年から始まり、キャラクターのファンに限らずクラシック音楽ファンの心もつかんできたコンサート。初音ミクとゆかりの深い札幌で、どのような公演が開催されるのでしょうか。公演のキーパーソンともいえる池田俊貴さんに、その思いをうかがいました!
池田俊貴 池田俊貴

Art by Rella

Butai Entertainment株式会社 代表取締役。北海道函館市出身。2016年に「初音ミクシンフォニー」、2021年には「セカイシンフォニー」を立ち上げ運営を担当。これまでさまざまなVOCALOID楽曲のアルバム制作などに携わってきた。

バーチャルシンガー楽曲をクラシックホールで

初音ミクシンフォニー2024

「初音ミクシンフォニー2024」サントリーホール公演の様子(写真:国府田利光)

――まず「初音ミクシンフォニー」が始まった経緯を教えてください。

池田俊貴さん(以下「池田」):私が以前勤めていたポニーキャニオンのレーベル「EXIT TUNES」では、VOCALOIDのコンピレーションアルバムやアーティストアルバムを担当させていただいていて、その後2013年に同じくレコード会社の「ワーナーミュージック・ジャパン」に移籍しました。そこではボカロとは関係のないアーティストも担当しつつ、同じチームのメンバーにゲーム「テイルズオブ」シリーズのオーケストラコンサートに携わっていた同僚がいて、そこでこの企画のヒントを得たんです。また、プライベートでも「ディズニー・オン・クラシック」などのコンサートも見に行っていたので、「初音ミクの楽曲でもできないかな」と思い立ったのが企画のきっかけです。

――ボカロというまったく違うジャンルの楽曲を、クラシックに落とし込むのは難しそうです。挑戦に不安はなかったのでしょうか?

池田:たしかに、僕も最初はどういったコンサートになるか、アレンジになるかは想像もつかなかったんですが、いわゆるゲーム音楽なんかでも、クラシックコンサートは数多く行われています。当時、アニメ、インターネット発音楽で括られがちだったボカロ曲の可能性を広げられるかもしれないと思いました。また、単純に自分自身が「ボカロをオーケストラで聞いてみたい!」という想いと、長く関わらせて頂いているボカロ曲の素晴らしさの再認識をこの初音ミクシンフォニーで行えると思いました。ただ、開催までは不安とワクワクが入り混じっていましたね(笑)。

初音ミクシンフォニー

「初音ミクシンフォニー2024」横浜公演の様子

――蓋を開けてみるまで、どうなるかはわからなかったと。

池田:そうですね。ただ、来ていただいた方にとっても、新鮮な体験になると思ったんです。僕自身もコンサートに通っていると、音源で聞くより、生音で、オーケストラで聞くっていうのは感動値が圧倒的に高まります。立ち上げ当初は10年も続くイベントになるとは思わなかったのでうれしいです。

――アレンジはどのように?

池田:4、5名で構成されたアレンジャーのチームがあります。それぞれのアレンジャーに振り分けているんですが、だいたい15〜20曲ぐらいをアレンジしています。コンサートが始まった最初の頃は、ボカロ楽曲をクラシック音楽の解釈に落とし込むようなアレンジが多かったです。曲のテンポもクラシック的というか、原曲とはけっこうイメージが異なっていたんですが、最近では原曲に近づけていくようなアレンジに変わった曲もありますね。ミクの声も楽器で表現したり、ジャンルに関わらずそれぞれの音をオーケストラ解釈で表現することができていて、今ではいろいろな選曲ができるようになりました。初音ミクシンフォニーファンの皆さんに納得いただけるようなアレンジを心がけています。

初音ミクシンフォニー

(写真:国府田利光)

初音ミクシンフォニー

(写真:国府田利光)

――楽曲だけではなく、演出面も進化してきたのでは?

池田:いわゆるミュージックビデオや、初音ミクをはじめとした司会映像を投影して、それも見ながらオーケストラ演奏を楽しむというのが基本スタイルでしたが、2020年に日本を代表するクラシックホール「サントリーホール」で公演を行った際は、初めて映像の投影などが無い完全なるクラッシクコンサートのスタイルで開催したんです。当初は「初音ミクがいないコンサートでファンの皆さんに満足していただけるか…」と不安に思う関係者もいましたが、いつか「サントリーホール」でやりたいという憧れがありました。クラシック専用ホールでのコンサートは挑戦でもありましたが、最高の音響空間で聴く体験は、必ず満足していただける…という自信があったんです。

公演も、バーチャルシンガーの歌唱や映像演出がある公演と、映像演出のないクラシックホールでのインスト生演奏の公演、という2タイプ選べるような企画にしたことで、よりファンの方々の満足度が高まったように感じます。両方来られる方も多いです。

初音ミクシンフォニー 初音ミクシンフォニー

(写真:国府田利光)

――いわゆる伝統的なクラシックコンサートとの大きな違いとはなんでしょう?

池田:ゲームミュージックやアニメソングなどでもクラシックコンサートは開催されているので、そういう意味では違いはないと思います。ただ、より難解な打ち込み音楽だったり、テンポが極端に速い楽曲があるなど、振り幅の大きさがボカロ曲ならではの特徴だと思います。そのクラシックアレンジを聞くことで、曲の魅力の新たな発見があるというのが大きな違いかなと思います。「まさかこの曲をやるなんて!」というような声も毎回いただくので、みなさんが、アッとおどろくような仕掛けをしたいですね。

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