
Domingo編集部
北海道の道東・音更町にある十勝川温泉は、琥珀色のモール温泉が名物の温泉地。化粧水のように肌になじむ泉質で「美人の湯」とも呼ばれています。帯広から車やバスで約20分とアクセスしやすく、道東観光の拠点にも最適。十勝川温泉には、モール温泉を堪能できる宿が多数ありますが、今回は特におすすめの4軒を厳選してご紹介します。
1.十勝川温泉の泉質や特徴、アクセスなど基本概要
十勝川温泉の泉質や特徴と、アクセスなどの基本的な情報についてご紹介します。その後、おすすめの温泉ホテル・宿をご案内します。
身体がポカポカしてお肌がしっとりするモール温泉

十勝川温泉で楽しめるモール温泉
十勝川温泉は、モール温泉と呼ばれる琥珀色をしたアルカリ性の泉質が最大の特徴。塩分と腐植物(フミン質)という植物性の成分が含まれることから、お肌にやさしく美肌効果や冷え性の改善などの効能が期待できるとされています。
植物性の泉質は、実はかなり貴重。一般的に温泉の多くは主に火山活動の影響で湧出するため、鉄分や硫黄など鉱物が多く含まれる泉質が大半です。十勝川温泉の泉質の主成分は一般的な温泉とは異なり、火山活動の影響による鉱物ではなく植物性の有機物です。

十勝川温泉の周辺は自然豊かな環境で白鳥の飛来地としても有名
古代の十勝川流域は、ワラやアシなどの植物が自生する湿原でした。数千年かけてこれらの植物が堆積し、地中に植物性の有機物が混ざる泥炭層や亜炭層ができました。さらに、深い地中から地熱で熱せられた地下水が泥炭層や亜炭層を通る時、植物性の有機物が滲み出て混ざり合い、モール温泉となりました。
十勝川温泉のほか近隣の帯広市街地などでも同様のモール温泉が湧き出ていますが、十勝川温泉周辺は地中の温泉層が比較的浅いところにあるため、周辺の地域よりも源泉温度は高めです。
帯広駅や道東道からアクセスしやすい

アクセスしやすいため宿泊客のほか日帰り入浴の方や足湯を楽しむ方も多いです
十勝川温泉へのアクセスは、一般的にはバスか車を利用します。公共交通機関を利用する場合は、帯広駅前から発着している十勝バスの十勝川温泉行を利用。所要時間は十勝川温泉行きが約30分、帯広駅前行きが約40分です。このほか、新千歳空港と帯広駅前を結ぶ都市間高速バス「とかちミルキーライナー」の一部の便は、帯広駅前を経由して十勝川温泉発着。新千歳空港まで乗り換えなしで行けるのは、道外からの旅行者にとっては便利です。
また、車を利用する場合は、道東道(北海道横断自動車道)の音更帯広インターを利用します。音更帯広インターから十勝川温泉までは、およそ20分です。
2.十勝川温泉でおすすめの温泉ホテル・宿
十勝川温泉には温泉ホテル・宿が複数あります。どちらのホテル・宿も素晴らしいのですが、浴場や客室、料理など特色のあるところを厳選し、4軒ピックアップして紹介します。
約100年の歴史がある老舗の宿「十勝川温泉 笹井ホテル」

笹井ホテル
「十勝川温泉 笹井ホテル」は、十勝川温泉の歴史とともに歩んできた老舗の温泉ホテル。十勝川温泉は、1900(明治33)年に自然湧出している湯を加熱して付近の住民が利用したのが湯治場や温泉地としての歩みの始まりと言われています。その後1913(大正2)年に源泉を掘り下げて温泉旅館の「笹井温泉」が開業。笹井温泉が前身となり、1926(大正15)年に笹井ホテルが開業しました。

内湯

露天風呂
自家源泉のモール温泉を満喫できる大浴場には、檜風呂や壺湯、露天風呂があるほか、打たせ湯、サウナもあります。檜の香りに包まれ、また壺湯で温泉を独り占めした気分になり、さらに外気に触れて開放感いっぱいの中で入浴したりと、さまざまな入浴方法が楽しめます。

壺湯
客室は和のテイストを取り入れた洋室のツインが数タイプあるほか、畳敷きの和室やカーペット敷きの洋室などがあります。2022年に改装した客室が複数あり、新しさが感じられます。

エグゼクティブ和ツイン

スーペリア和ツイン
食事は、地元の食材を中心に季節ごとの旬の素材を生かした料理をバイキングスタイルで楽しめます。夕食は和洋中の多彩な料理が並び、どれを食べようか迷ってしまうほど。中でも、レストラン内にあるオープンキッチンでシェフが目の前で調理して提供する揚げたての天ぷらや牛ステーキは必食。夕食は事前に予約をすれば、バイキングスタイルではなく特別なコース料理をオーダーすることも可能です。

多彩な料理が並ぶ夕食のイメージ

目の前で作りたての味は格別!
朝食もバイキングスタイルでさまざまな料理を楽しめますが、中でもおすすめはフレンチトースト。ふわっとしつつしっとり感もある、とろけるような味わいがクセになります。

朝食のフレンチトースト
※写真提供:十勝川温泉 笹井ホテル
全客室にモール温泉がある「十勝川モール温泉 清寂房」

十勝川モール温泉 清寂房
「十勝川モール温泉 清寂房」は、客室全てに温泉露天風呂と庭があり、プライベート感と高級感、そして特別感のある宿泊施設。2022年8月末にオープンした施設で、真新しさも随所に感じられます。日常から解き放たれ、隠れ家でじっくり贅沢に過ごしてみたいという方に特におすすめです。

大浴場の露天風呂(手前)と内湯(奥)

ロウリュ式サウナもあります
茶褐色のモール温泉は全ての客室で楽しめるほか、大浴場でも入浴できます。広い浴槽で開放感いっぱいの気分で温泉に浸るなら大浴場で、他人の目を気にせず気持ちの赴くまま入浴をしたいなら客室で堪能できます。客室の温泉は源泉掛け流しなので、地中から湧き出た大地の恵みを素肌でしっかりと感じられます。

客室にある温泉、とても贅沢な空間です

客室は全24室で、どの客室も広さ50㎡以上あり、ゆったりとした間取り
十勝川モール温泉 清寂房の建物は全て平屋建て。中庭を取り囲むようにロビーや大浴場、レストランなどがあり、それらの周囲を長い回廊が「ロ」の字型のようにつながっています。回廊の内側にパブリックスペースがあり、外側に客室が並びます。客室は一部屋ごとに独立した形状で外に飛び出すようなスタイルで配されているので、周囲の気配をあまり意識することなく自分たちだけの時間を静かに過ごせます。

「はなれ」をイメージした客室で、全てに温泉露天風呂と庭があります
食事は北海道の食材と全国各地の旬の食材をふんだんに使った料理を味わえます。夕食は、和食をベースにさまざまな料理ジャンルのテイストを融合させた創作和食会席か、鉄板焼きのコースを選べます。道産ワインなど地元のお酒とともに楽しみましょう。朝はとても手の込んだ和朝食を味わえます。

夕食の創作和食会席イメージ

鉄板焼きイメージ

朝食イメージ
これぞ大人の隠れ家という佇まいの温泉宿泊施設。自分たちだけの静かなひとときをゆったりと過ごしたい方にぴったりです。
※写真提供:十勝川モール温泉 清寂房
十勝川の眺望を楽しめる老舗宿「十勝川温泉 観月苑」

十勝川温泉 観月苑
「十勝川温泉 観月苑」は、十勝川のほとりにある眺望自慢の老舗温泉ホテル。十勝川温泉が誕生して間もない頃から長年温泉客をもてなし、今に至ります。モール温泉を楽しめるのはもちろん、地元の旬の食材をたっぷり取り入れた料理も評判が高いです。

源泉掛け流しのモール温泉を楽しめます
化粧水のごとくお肌にやさしいモール温泉を満喫できる大浴場には、大浴槽のほか寝湯や歩行湯などの浴槽もあります。岩を配した露天風呂からは雄大な十勝の景観も楽しめます。

開放感のある露天風呂
温泉入浴でプライベート感を重視したい方は、客室に温泉を引き入れた展望露天風呂付特別室や露天風呂付客室で、モール温泉をじっくりと堪能しましょう。展望露天風呂からは、雄大な十勝川の川の流れと十勝平野を見渡せ、広々とした空の眺めも楽しめます。

展望露天風呂からの眺めは爽快!
客室はこれらの露天風呂付のお部屋のほか、和室や和洋室などの一般客室や、プライベートサウナ付和洋スイートなどもあります。どんなスタイルで過ごしたいか、プライベートで温泉やサウナを利用したいかなど、利用人数とシーンや好みに合わせて客室を選びましょう。

展望露天風呂付特別室の客室内イメージ
十勝川温泉 観月苑では、温泉とともに食事も魅力。小麦、小豆、ジャガイモ、チーズ、豚肉や牛肉、鶏肉など食肉の数々、十勝産の大地の幸や海の幸をふんだんに使った料理を楽しめます。

十勝川を望むレストラン
夕食は、レストランでのバイキングスタイルか食事処での和食会席料理のいずれかのプランを選べます。バイキング料理は和洋中さまざまな料理が並び、ライブキッチンで出来立ての料理を楽しめるほか、スイーツタワーやサラダコーナーなどに並ぶ品々も充実しています。

夕食の特性ピザは具材たっぷりチーズもトロトロ
朝食もバイキングスタイルで、自分で作れる海鮮丼など和食のほか、洋食メニューも数多くありパンの種類も豊富です。夕食と朝食のどの料理にも、生産者の顔や歴史などこの地の食文化を伝えることにこだわるというポリシーを掲げています。四季折々の旬の幸のおもてなしを楽しみましょう。

朝食のパンのイメージ
※写真提供:十勝川温泉 観月苑
貸切風呂も楽しめる温泉宿「十勝川温泉 富士ホテル」

十勝川温泉 富士ホテル
十勝川温泉 富士ホテルは、自家源泉から湧出する源泉100%掛け流しのモール温泉を楽しめる宿泊施設。十勝川温泉エリアで唯一、温泉の貸切風呂もあります。豪華さや高級さよりも、仲の良い知り合いの家に行くような感覚で良質な泉質をじっくり楽しんでみたいという方へ、特におすすめです。

大浴場
大浴場には露天風呂こそありませんが、泉質のよさには定評があります。自社単独の源泉から湧き出る温泉を、加水も加温もせずそのまま浴槽に注いでいます。浴槽から静かにオーバーフローする琥珀色の湯。新鮮な湯が常に注がれている証です。大浴場は深夜帯を除き利用できるので、夜も朝もじっくりと良質な湯を楽しめます。

モール温泉を絶え間なく湯船へ
貸切風呂は1時間単位の予約制で利用でき、こちらも源泉100%掛け流し。まわりの目を気にせず入浴したいという方におすすめです。

和洋室のイメージ

ファミリールーム
客室は和室や和洋室を中心に、ファミリールームや洋室などもあります。温泉つきの客室はありませんが、定員1名の部屋以外にはユニットバスやシャワールームが備わっています。

夕食イメージ

「皿だけはやけにでかい!前菜3品とピクルスをチョイス」という料理名がちょっと楽しい
夕食は和洋創作膳で、和食・洋食にこだわりなく美味しく楽しくをテーマにした独創的な料理メニューを楽しめます。朝食は和洋中を織り交ぜたバイキング形式です(日によりセットメニューの場合もあり)。どの料理も料理長やスタッフの手作り感と楽しさが感じられる、おもてなしの心がつまった品々を味わえます。

お子さん向けメニューの用意もあります
スタッフの気遣いや心意気が随所で感じられる温泉ホテルで、良質なモール温泉を肩肘張らずに楽しみたいという方におすすめです。
※写真提供:十勝川温泉 富士ホテル
3.十勝川温泉に宿泊してモール温泉を楽しもう

モール温泉の湯のイメージ
十勝川温泉は、世界的に見ても珍しい植物性の泉質の湯が豊富に湧き出る温泉地。さまざまなタイプの温泉宿泊施設がありますが、宿泊スタイルや雰囲気などによりお好みの施設を選びましょう。今回おすすめした温泉ホテル・宿はどの施設でもモール温泉を楽しめますし、食事も定評があるところばかりです。十勝川温泉に泊まってお風呂に入り、素肌美人になりましょう。
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ライタープロフィール
トラベルクリエイター
川島 暢華
神奈川県出身。北海道全179市町村を旅して北国の魅力と魔力にとりつかれ、2009年に北海道へ移住。それ以来、主に旅行や地域活性に関するメディアの取材撮影と記事や映像の制作、企画編集などを手掛ける。マイミッションは「北海道ファンを増やす」こと。