地域と福祉と若い力。当別町・鷲谷建さんが考え実践してきたこと|Domingo

地域と福祉と若い力。当別町・鷲谷建さんが考え実践してきたこと

当別町

ひと

「支援者ぶらないことに気をつけて地域の方と関わっています。」

当別町で理学療法士になるための勉強をしながら地域の福祉問題に取り組んでいる大学4年生、鷲谷建(わしやたつる)さん。

仕事ではないからこそできる、地元の人との関わり方をお聞きしました。

1人の男性との出会い

鷲谷さんは秋田県出身で、大学進学を機に初めて北海道に訪れました。高校時代は強豪の野球部に所属して選手として活躍する傍ら、練習メニューを考えたりチームの管理をしたりもしました。そこで人を支えることにやりがいを感じ、医療の道を志します。

高校生の頃から「地域を面白くしたい、地域を良くしたい」と漠然と考えていた鷲谷さん。地元だけではなく、自身の通う大学がある当別町へも同じ思いを抱きます。

「理学療法学科(リハビリが専門)に入学したあと、なんとか地域を盛り上げられないかなと思い自分で考えて行動を起こしてみました。しかしなかなかうまくいかない期間が1年くらいありました。」

鷲谷さんが大学2年生になった頃、『地域で活動したい』という思いを知った当別町の福祉関係者の方から、1人の高齢の男性を紹介されます。

この男性との出会いが鷲谷さんのビジョンを明確にします。

「紹介していただいた方は奥さんが亡くなって日が浅く、さらに移住者だったので地域に繋がりもありませんでした。『毎日あまり楽しいことがない。笑いながら生きていてもしょうがない。』とおっしゃっていました。
それを聞いたとき、地域を面白くしたいと言っていた自分が、目の前の人に楽しく生きたいと思ってもらうことすらできていないことにがっかりしました。同時に健康なうちは高齢者と関わることがない医療職への疑問も感じました。」

このとき自身の中に生まれた疑問やモヤモヤ感を探りたい、そして地域や地域の方に対してできることはないかと考えた鷲谷さん。答えを見つけるべく、この高齢者のご自宅に足繁く通うようになります。

何度も訪問して会話をしていく中で、相手のやりたいことがだんだんわかってきます。
「やりたいことを一緒に叶えることはできないだろうか」と思った鷲谷さんは、同じ大学の学生とともに一つずつ実行。

「活動を喜んでもらえたことと、一緒に活動した学生につながりができたことで、学生でも地域の人の生きがいを作ることができると確信しました。」

最初に出会った男性と鷲谷さん

最初に出会った男性と鷲谷さん

サークル活動から考えた医療職の在り方

活動をもっと広げたいと考えた鷲谷さんは、この年の秋にサークル「ONE」を設立しました。
それまで地域で活動することに興味を持っていなかったサークルの学生たちは、大学の講義や病院での実習で得た知識と、地域の現状とのギャップに驚くことになります。

「僕たちは怪我や病気になった人を、病院でリハビリ職として救いたいという気持ちで大学で勉強をしていました。でも地域に出ると、生きがいを見つけられないおばあちゃん、運動嫌いでリハビリをしないおじいちゃんを目の当たりにします。」

鷲谷さんと学生は「この人たちを5年後10年後に自分たちがリハビリするんだ」と思うと同時に、「この人たちを“今”何もしないで放置することは、本質的にその人のためになっているのだろうか」と考えるきっかけになりました。

またサークル活動を通して、支援する方の思いやこれまでの生き方を知り、寄り添いたいと日々学生は感じています。

「例えば医療職の人間が施設への入居を勧めても、高齢で支援がないと生活できない人がそれを拒む理由は絶対にある。『家族との思い出がある家だからずっと自宅で過ごしたい』ということも、実際に自宅に訪問するとお話ししてもらえます。色々な思いを持つ人がいることを理解して、最大限支えるにはどうするべきかを考えることが医療職や福祉職の仕事だと思っています。」

自宅訪問の活動

自宅訪問の活動

支援者ではなく1人の人間として関わる

サークル「ONE」として活動する際に鷲谷さんが考える、地域の人との関係の作り方をお話ししてもらいました。

「サークルの後輩たちが、地元の小中学生のスポーツ少年団やクラブと現在1年半ほど活動しています。最初の1年くらいは怪我予防の教室を開いていて、あまり上手くいっていませんでしたし、教室というやり方だと子供は突然怪我について教えられても、次の日には忘れてしまうと思いました。
取り組んでいる後輩と話してみると、彼らは同じような指導を子供の頃に受けていたのに怪我をしてリハビリをしたことがあると言っていたんです。」

後輩の活動を聞いた鷲谷さんは自分の地域活動とも重ね合わせ、一緒にアプローチを考えます。
考えた活動は、子供達と一緒に運動をし、遊ぶこと。
そうすることで教える側と教えられる側の関係ではなく、一緒に交流する人同士という関係になり、一緒に体操をしたり、怪我予防をする大学生がかっこいいから小学生に真似したいと思ってもらったりすることができました。

「リハビリや医療の今までの在り方である“支援者”と“利用者”という関係を変え、僕たちは地域の中で人と人との繋がりを作って怪我や病気を予防していくことを大切にしています。」


高齢者との関わりについても“支援者ぶらない”ことに気をつけているという鷲谷さん。

「ケアマネージャーやヘルパーに対して頑固になる高齢者って結構多いので、そういった方の自宅を訪問するときに福祉関係者の方から、『この方は少し気難しいところがあるから気をつけてね』と言われることがあります。でも僕たちは“支援者”ではなく、友達や孫のような距離感で接することができるので、それが面白いなと感じますね。楽しくお話ししたことを訪問後に福祉関係者の方に伝えると、みんな腰を抜かすほど驚きます(笑)介護への不満などリアルな声も聞くことができる距離感です。」

どんな活動でも、地域の人々と1人の人間として関わることを意識しているそうです。

サークル「ONE」のメンバー

サークル「ONE」のメンバー

地域づくりをしていきたい

今後も福祉分野で地域づくりをしていきたいと話す鷲谷さん。地域づくりとは、支援が必要な方はもちろん、生きがいがない高齢者を支えることだと考えているそうです。

「福祉を充実させて日常的に地域の人と関わり続ける事で、結果的にリハビリを受ける人も少なくなると思っています。やっぱり福祉に関わる仕事をしたいですね。
いつか地元の秋田へ帰りたいという思いもありますが、今は当別町で沢山の地域の方に支えられながら地域づくりをする一員として応援してもらっているので、当別で自分ができることは全部やり切りたいと思っています。」


周りを巻き込んで若い力で地域づくりができる可能性を感じました。これから社会人となっていく鷲谷さんの今後の活躍が楽しみです。

ライタープロフィール

嶋貫楓 嶋貫楓

1999年生まれ。4歳から現在も北広島市に在住。2018年より北海道教育大学岩見沢校に在学し、アートを用いた地域活性化について学ぶ。

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