Domingo編集部
僕の視点で標茶町の魅力を伝えていくこの「しべちゃ日和」。連載第2回は虹別にある「暮らすことキナ」というゲストハウス兼レストランをご紹介します。
1. 暮らすことキナ。中本啓子さん
2. 啓子さんから学んだこと
3. 今ある幸せに気づくこと
4. 暮らすことキナ。中本啓子さんインタビュー
5. 終わりに
暮らすことキナ。中本啓子さん
キナには決まったメニューがなく、注文をするとその人に合わせたメニューを考えてくれます。肉体労働の人にはお肉を中心としたパワフルなメニュー。アレルギーを持つ子供や健康に気を使っている方には野菜中心のヘルシーなメニューなど、どれも啓子さんの想いが詰まった手料理です。
「同じ窯の飯を食うじゃないけれど、ご飯を一緒に食べると近くなれる気がする。『食』ってみんなが思っているより、とっても大事な要素だと思う」言葉に重みがあります。
啓子さんはゲストハウスを運営する傍らで、もう1つの顔があります。それは、極北へ何度も旅をしてきた旅人であるということ。これまで何度もカナダやアラスカへ行き、原野でキャンプをしたりカヌーで源流下りをしたりと冒険家顔負けの旅を何度もしてきています。
僕もアラスカへ行き、野生動物の撮影をしていたので啓子さんから聞く話は本当に面白く、僕たちはいつも旅の話や人生の話をしています。
啓子さんが教えてくれる大切なことは「毎日を受け入れる」こと。移住してきてから思っているのは、この地に根を張り、生きている人たちは、皆どこかで今の暮らしを心から楽しんでいます。日の出と共に働き、暗くなったら家に帰り、家族でご飯を食べ、寝る。そんな当たり前の暮らしを楽しんでいます。
啓子さんから学んだこと
でも、標茶町に引っ越して標茶で暮らす人々と関わり、啓子さんと出会ったことで僕の価値観は少しずつ変わっていきました。
「そんなに焦ってどうするの」
あるときふと啓子さんに笑いながら言われました。
「急がず、焦らず、ゆっくりやれば良いよ」
僕の中にあった何かが崩れたような、そんな感覚がありました。
何かを目指すことと引き換えに、僕は目の前にある大切なものに気づけなかったのです。それから少しずつ、色んなものが見えてくるようになりました。
僕の犬達の豊かな表情、季節の移ろい、頬を撫でる風の優しさ、決められた場所で咲く小さな花。暖かい日差し。雨の有り難み。挙げればキリがありません。
実は日常にもたくさんの幸せや奇跡が詰まっていたのです。
今ある幸せに気づくこと
啓子さんが本心で言っていることが伝わります。関東や都会に比べて環境も厳しい田舎で暮らしていく為に必要なことは、高尚な目標でもなく、強靭な精神力や体力でもなく、日々を受け入れる素朴さなのかもしれません。そんな啓子さんが作り出す空間があるキナは、今僕にとってなくてはならない存在です。
「暮らすことキナ」の「暮らすこと」の意味は、「ここに暮らすように滞在してほしい」という啓子さんの願いからくるものです。その名前にも、どこか啓子さんの温かさを感じることができます。豊かさとは、もしかしたら何かを得ることではなく、今あることに気付くことなのかもしれない。
啓子さんと出会って僕はそう思えるようになってきました。
そして現在、僕が所属している標茶町の地域おこし協力隊のチャンネルにて「暮らすことキナ」と啓子さんを取材させて頂いた映像が公開中です。
標茶町の地域おこし協力隊チャンネルでは、僕が取材した様々な事業者様の紹介や標茶町のホットなニュースをお伝えするしべちゃ便りなどたくさんのコンテンツをお届けしております。標茶町にも関わりがない人でも見やすいように、映像の綺麗さに拘っており、標茶を知らない人でも見やすいように工夫しています。
ぜひ、お時間のある方は標茶町地域おこしチャンネルをご覧ください。
終わりに
北海道1年生の僕ですが、日々変わっていくものを楽しみながら変わらないものも大切に、毎日に感謝して過ごしていきたいと思っています。
筆者プロフィール
標茶町地域おこし協力隊・写真家・映像クリエイター 中道 智大
1988年千葉県野田市出身。小さい頃から動物や自然が大好きで20代の頃はドッグトレーナーとして様々な犬の訓練に携わる。5年前から自然と動物達の写真と映像制作を始める。現在、北海道標茶町の狼20頭が飼育されていた森で犬4頭と自然暮らしをしている。『人と動物の関係性』をテーマに各SNSにて作品を発表中。