Domingo編集部
Domingo編集部が北海道の豊かな「食」と「ひと」をめぐり、そのストーリーを綴る連載がスタート!
道内の食材にこだわり生産者さんとの繋がりも多い料理家の松田真枝さんに、食にまつわる旅を案内してもらいます。
料理家 松田真枝
北海道在住。昆布を愛するイタリアン発の料理家です。 dancyu シリーズ連載「昆布はどこへ行く。」 エシカルはおいしい!! 「昆布のテロワールを訪ねて」 雑誌、テレビ、新聞、市町村応援レシピ。「海の恵み食の底力JAPAN」料理家レシピ掲載
今回、松田さんが紹介してくれたのは栗山町で新生姜栽培に取り組む吉田農場の吉田寿栄さん。
「新生姜って北海道でも栽培できるものなの?」「新生姜って畑ではどんな姿なの?」など、気になることをたくさん教えていただきました!
今が旬!北海道産の「新生姜」のこと、もっと知ってみませんか?
目次
1. 北海道で旬を迎えた新生姜
2. 北海道で「新生姜を栽培する」ということ
3. え?こんな形だったの?新生姜の姿
4. この新生姜はどこで手に入る?
5. 吉田さんが描く新生姜の未来
北海道で旬を迎えた新生姜
北海道産の新生姜は、いまが収穫の最盛期。
いま、北海道のいくつかのまちで新生姜の栽培が行われています。
そのまちのひとつである栗山町での栽培は今年で3年目で、町内の6軒の農家さんが新生姜を栽培しています。
今回お話をお聞きしたのは、吉田農場の吉田寿栄さんです。
栗山町だけでなく岩見沢市にも畑をもち、主な作物としてはタマネギを栽培する農家さんですが、2年前からJAと一緒になって新生姜の栽培にも取り組んでいます。
北海道で「新生姜を栽培する」ということ
「北海道で新生姜が栽培されている」と聞いても、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。
生姜の産地といえば、日本国内では高知県が有名。スーパーに並んでいる生姜も、高知県産のものが多いのではないでしょうか。
世界的な生姜の一大産地は、インドやナイジェリアなど、暖かい国ですよね。
そう、生姜の栽培には温暖な地域が適しており、寒さを嫌う作物なのです。
なぜ、夏場でも朝晩は比較的涼しい北海道で、温暖な地域を好む生姜を育てることができたのでしょうか?
「種生姜(古根生姜)が芽を出すまでは徹底的に温度管理をすること、あとはあったかいハウスの中で育てることだね。」
吉田さんは主として栽培するタマネギの苗を育て終え、空いたハウスを使って生姜栽培をしています。他の農家さんは稲の苗を育て終わったハウスで栽培しているのだそう。
新生姜の栽培スケジュールは、ざっくりいうとこのような感じ。
まず、4月上旬に種生姜(古根生姜)を植え、芽吹かせます。生姜は14℃を下回ると腐ってしまうという寒さに弱い植物。そのため温度を一定に保つことができる電熱線を使って、積算温度(※)が700度になり芽がでるまで20度で35日間育てるのだそう。
※積算温度:植物とくに農作物の生育に要する熱量を表す目安の一つ。生育日数の各日の平均気温の積算値で表す。(小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)より)
タマネギの苗の栽培が終わりハウスが空いた5月中旬、種生姜から芽が出たら、ハウスに植え替えます。時期が少しずれますが、稲の苗栽培が終わったハウスにも同様に生姜を植えます。
それからは、ハウスの中で水を切らさないようにし、日光をたっぷり浴びさせて生姜を育てるのだと言います。
「とにかく水を切らさないようにする。生姜は病気に強くて、農薬を一切使わないんだよね。だから葉っぱも生姜も安心安全だよ。」
畑の土が、なにやら緑色になっている部分は苔なのだそう。水が絶えないように栽培している証。吉田農場の土は粘土質で、保水力があるのも生姜栽培に適しているんだとか。
9月末〜10月中旬ごろ、新生姜が収穫できるまでに育ったら掘り起こします。
吉田農場での新生姜の栽培は今年で2年目。4月に行うポット育苗も今年から始めるなど、農協の担当者の方と一緒に試行錯誤しながら新生姜栽培に励んでいます。
え?こんな形だったの?新生姜の姿
時は9月中旬、私たちがお伺いした際に新生姜を掘っていただきました。
葉っぱはこれ。笹の葉にも似たような出で立ち。
生姜を傷つけないようにぐっとスコップを差し込んで掘り出すと
こんなに大きな新生姜のかたまりが……!
新生姜ってこんな風に土に埋まっていて、しかももともとこんなにも大きなものだったのか、と衝撃を受けました。
上の白っぽい部分が新生姜、下にちょこっとついているのは芽を出すためにつかった種生姜(古根生姜)。
ちいさな種生姜から、こんなに大きな新生姜ができてこんな葉っぱが生い茂るのだと思うと、生姜の生命力に驚かされます。
掘り起こされた新生姜は、綺麗に洗って葉の部分を切って出荷されます。
みずみずしくて、色もとても綺麗ですよね。
吉田さんのお気に入りの食べ方は、甘酢漬けや、佃煮なんだそう!
料理家松田さんがこの時の生姜を使って、同じ栗山町にある小林酒造の日本酒「北斗随想」「まる田」に合う新生姜レシピを作ってくれました!
今が旬!北海道・栗山町の新生姜を使ったおつまみレシピ
ぜひこのレシピを参考に、旬を迎えた新生姜をたっぷり食べてみてくださいね。
この新生姜はどこで手に入る?
吉田農場の新生姜、出荷先はホクレンです。
北海道内のホクレンや、エーコープなどで購入することができ、東京にも一部出荷されるそう。
お近くの方は買い物の際にチェックしてみてくださいね。
吉田さんが描く新生姜の未来
「北海道の人たちが栗山で育った新生姜を食べて、ファンになってくれたら嬉しいな。新生姜を食べるっていう文化をもっと北海道に根付かせて、農家としてもっと新生姜を作りたいね」
今年3年目を迎えた、栗山町での新生姜栽培。現在は「研究会」のような形で、試行錯誤をしながら栽培している段階。
栽培方法については、道内で先んじて新生姜栽培に取り組んでいる美唄市の農家さんや農協と意見を交わし合いながらより良い方法を模索してきたと言います。
現在の課題は、出荷先が少ないこと。安定的な栽培が可能になってきた今、北海道民に「地元で新生姜が栽培されていること」を知って、もっと気軽に新生姜を楽しむような文化が根付いてほしいとお話ししてくださいました。
みなさんもスーパーで北海道産の新生姜を見つけたらぜひ手にとって、新生姜の甘酢漬けはもちろんのこと、料理家松田さんのしぐれ煮や海苔サンドのレシピも楽しんでみてくださいね。
コーディネーター・レシピ提供
料理家 松田真枝
北海道在住。昆布を愛するイタリアン発の料理家です。 dancyu シリーズ連載「昆布はどこへ行く。」 エシカルはおいしい!! 「昆布のテロワールを訪ねて」 雑誌、テレビ、新聞、市町村応援レシピ。「海の恵み食の底力JAPAN」料理家レシピ掲載
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