酒造りを地域にひらく。時代の変化に対応する小林酒造、4代目小林米三郎の想い|Domingo

酒造りを地域にひらく。時代の変化に対応する小林酒造、4代目小林米三郎の想い

栗山町

スポット

143年もの間、北海道で日本酒を造り続ける造り酒屋をご存知ですか? 北の錦をはじめとし、米の力強さが感じられる酒を造る「小林酒造」です。

Domingo編集部が北海道の豊かな「食」と「ひと」をめぐり、そのストーリーを綴る連載がスタート!
道内の食材にこだわり生産者さんとの繋がりも多い料理家の松田真枝さんに、食にまつわる旅を案内してもらいます。

料理家・松田真枝さん 料理家 松田真枝

北海道在住。昆布を愛するイタリアン発の料理家です。 dancyu シリーズ連載「昆布はどこへ行く。」 エシカルはおいしい!! 「昆布のテロワールを訪ねて」 雑誌、テレビ、新聞、市町村応援レシピ。「海の恵み食の底力JAPAN」料理家レシピ掲載

今回お話をお聞きしたのは、小林酒造の4代目小林米三郎さん。
「なぜ栗山町で造り酒屋を始めたか?」「北の錦はいかにして唯一無二なお酒になったのか?」など、地域と日本酒の関係性について、そして今後の展望について色々なお話をお伺いしました!

地域とともに発展し、こだわりの酒造りを続けてきた小林酒造のこと、知ればさらに「北の錦」がおいしくなること間違いなしですよ。

創業143年!老舗造り酒屋「小林酒造」

みなさん、日本酒はお好きですか?
Domingo編集部は、旅先ではいつの間にか日本酒を買って荷物が増えているくらい日本酒好き。小林酒造の米の味が濃く力強いお酒も、大好きです。

小林酒造は創業143年の老舗造り酒屋。
主力の日本酒は、「北の錦」で、「北斗随想」や「まる田」、「冬花火」などの人気の銘柄の日本酒が数多く販売され、その種類は30種類ほどにも及びます。
北の錦 オンラインショップ

「小林酒造のテーマは、全て米生産者の顔が見えること、そしてその風土を感じる酒を造ることです。北海道の米を使って、その米の味がしっかりする酒を作っています。」

米三郎さん

4代目 小林米三郎さん

小林酒造の日本酒は、北海道産米使用率100%。特定名称酒(※)100%を大前提に、各地の農家の米の個性に合わせた酒造りを行っています。

※特定名称酒:特定名称の清酒とは、吟醸酒、純米酒、本醸造酒をいい、それぞれ所定の要件に該当するものにその名称を表示することができます。(国税庁HPより


夕張炭鉱の盛衰の歴史とともにある小林酒造の酒造り

小林酒造といえば、一万坪もの敷地に建つ17棟のレンガ蔵や石蔵の美しい建物が印象的。登録有形文化財にも指定されています。

小林酒造全景

画像提供:小林酒造

造り酒屋として、小林酒造はなぜこんなにも大きく発展できたのでしょうか?
小林酒造の歴史を紐解いてみましょう。

はじまりは1878年(明治11年)にも遡ります。
新潟の出身だった初代小林米三郎が北海道に移り住み、「北海道で錦を飾りたい」との想いとともに札幌で創業。創成川の水を使い造り酒屋を営んでいました。

創業から20年ほどたった1900年頃、小林酒造は転機を迎えます。
夕張炭鉱が栄え、人とお金の流れがどんどん夕張に動く様子を目の当たりにし、小林酒造は景気のいい夕張のすぐ近く、栗山町(当時の角田村)に移転したのです。

小林酒造の昔の形

画像提供:小林酒造

夕張炭鉱で働く炭鉱員は、毎日が命がけの仕事。明日をも知れない命、今日の疲れを癒して明日への活力を得ることができる酒を楽しんだといいます。
北炭(北海道炭礦汽船株式会社)への日本酒の納入権を獲得したことも後押しになり、酒は飛ぶように売れ、この頃小林酒造は黄金期を迎えました。

夕張炭鉱と小林酒造の関係は、それだけにとどまりません。極寒の北海道では難しいとされた酒造りに、夕張炭鉱で採掘された石炭のエネルギーを用いたのです。こうして、小林酒造は炭鉱の歴史とともに大きく発展してきました。

石炭のエネルギーを用いる

しかし時代は進み、戦後モータリゼーションが始まると夕張炭鉱は急激に衰退。炭鉱員に親しまれた日本酒も、炭鉱の衰退に伴って急激に売上を落とします。

炭鉱の衰退を契機に、これまでの「量」を重視する酒造りから「質」を高める酒造りへと方向転換を図ります。
1985年(昭和60年)には、悲願であった道産米100%の清酒の販売を開始しました。

小林酒造、復活にむけた4代目小林米三郎の挑戦

念願だった北海道産米100%使用の日本酒の製造には成功したものの、その後も厳しい時代は続きます。

現在の代表である4代目小林米三郎さんが小林酒造に入社したのは1989年(平成元年)。
一般企業に2年、その後小林酒造の取引メーカーである日本石油で2年間石油に関わる仕事をした後、小林酒造に戻ってきたのだといいます。

「家業を継ぐことに対して反発する時期もありました。私の旧姓は『小林米孝』っていうのですが、米に孝行するって書くでしょ?もう生まれた時から小林酒造を継ぐってことは決まってたようなものなんですよね。様々な葛藤がありつつも、小林酒造に戻ることを決めました」

米三郎さん

戻ってきたときの小林酒造はいつ潰れてもおかしくないような状態。

「小林酒造に、そしてまちに活気を取り戻したい。2つのことに重点的に取り組みました。まずは”酒蔵を観光資源にする”こと。そしてふたつめに、”酒質を改善する”ことです。」

4代目小林米三郎さんがまず取り組んだのは、酒蔵の観光資源化。
1989年(平成元年)から、4月の第2土日に一般向けの蔵を開放する「酒蔵まつり」を始めました。
地元を中心とした食べ物屋台が立ち並び、この2日間限定で「生にごり酒」を振舞ったりする年に一度のお祭りです。コロナ前は、例年2万人以上が来場していたといいます。

老舗まつり

画像提供:老舗まつり

また1995年(平成7年)には、「蔵元北の錦記念館」をオープンしました。

この建物は1944年に完成し、銀行や旧本社事務所として使われていたのだそう。現在は小林酒造の日本酒の直売所となっており、試飲しつつ購入できる日本酒好きにはたまらないスポットです。

直売所

さらに2階では小林酒造の歴史をたどることができる約5000点の酒器や什器などが展示されており、当時の暮らしを想像することもできます。

展示

他にも、小林家錦水庵などの関連施設も私たちを楽しませてくれます。

「酒蔵を地域に開くと、お客さんからのさまざまな声を聞くことができるようになりました。なかでも、”小林酒造の酒を飲むと頭が痛くなる”と言われたのは、小林酒造としての転機だったかもしれません。」

小林酒造の日本酒を飲んでくれているお客さんの声をもとにより一層力を入れたのが酒質の改善。目指したのは、地元の米と麹、水を使った土地の風土を感じられるのどごしのよい日本酒造りでした。

小林酒造がかねてより取り組んできた原料米の北海道産化をさらに進め、2009年(平成21年)には、遂に原料米を100%北海道産に切り替えました。

北海道、そして栗山町の豊かさを存分に感じられる日本酒を愉しんでみてはいかがでしょうか。
北の錦 オンラインショップ
※お酒は二十歳になってから

道産米での酒造りの可能性

原料米を北海道産100%にこだわった小林酒造の日本酒は2005年、全国新酒鑑評会で2年連続金賞を受賞。純粋に北海道産の原料を使った酒としては初めてのことだったのだそう。

さらに北の錦は、日本国内にとどまらず海外でも高く評価されています。
フランスで開催されている日本酒コンクール「Kura Master」にて、「北の錦 純米大吟醸 暖簾ラベル」が、2018年には純米大吟醸&純米吟醸酒部門で金賞、2020年には純米大吟醸酒部門でプラチナ賞を受賞しているのです。

北の錦 純米大吟醸 暖簾ラベル

画像提供:小林酒造

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことが後押しし、世界での日本酒需要が高まっているのだそう。
「現在、小林酒造が日本酒を輸出しているシンガポールや台湾、中国などのアジアを中心とした国の他にも、ヨーロッパなどの国々にも輸出を広げ、北海道産の日本酒を世界に広げていきたいですね。」

小林酒造の進化はまだまだ止まりません。

小林酒造を「空知の酒のテーマパーク」に

4代目小林米三郎さんは、「小林酒造を空知の酒のテーマパークにしたい」と話します。

酒蔵まつりなどのイベントの開催、歴史や道具の展示や飲食店の併設など、酒蔵を地域に開く観光に目を向けると同時に、さらに美味しい酒造りをする。今私たちが持っている開かれた小林酒造のイメージを作り上げた4代目小林米三郎さん。

「何をやったらうまくいくのかわからない状態で、とにかくがむしゃらにもがいてもがいて進んできました。常に時代の変化を感じとり、変えるべきところは変え、残していくべき部分はしっかり残す。常に未来に向かって進んでいきます」

小林酒造の酒造りと地域に真摯に向き合う、本当に素敵な方でした。
今後、小林酒造がもっと面白い場所になっていくことは間違いありません。

米三郎さん

小林酒造のお酒に合う、新生姜を使ったレシピの記事はこちら!

■今が旬!北海道・栗山町の新生姜を使ったおつまみレシピ

レシピ記事

左:生姜たっぷり牛肉のしぐれ煮  右:新生姜の海苔サンド

コーディネーター

料理家・松田真枝さん 料理家 松田真枝

北海道在住。昆布を愛するイタリアン発の料理家です。 dancyu シリーズ連載「昆布はどこへ行く。」 エシカルはおいしい!! 「昆布のテロワールを訪ねて」 雑誌、テレビ、新聞、市町村応援レシピ。「海の恵み食の底力JAPAN」料理家レシピ掲載

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