Domingo編集部
Domingo編集部で始まった、北海道の豊かな「食」と「ひと」をめぐり、そのストーリーを綴る連載!道内の食材にこだわり生産者さんとの繋がりも多い料理家の松田真枝さんに、食にまつわる旅を案内してもらいます。
今回お話をお聞きしたのは、栗山町で獲れたて新鮮野菜や加工品を販売する直売所「値ごろ市」の運営をし、自身も「湯地の丘自然農園」の農家さんである渕野巌(ふちの いわお)さん。
栗山町の豊かな環境の中で育まれた野菜のおいしさを、「見て」「聞いて」「食べて」実感できる値ごろ市のこだわりにせまります。
値ごろ市
(取材日:9月10日)
値ごろ市は農家さんが運営する直売所
渕野さんの農園では、豊かな自然環境と調和しながらストレスをかけず丁寧に農作物をつくり、多くの人に届けることをモットーにしています。
直売所「値ごろ市」では、自身が運営する農園だけでなく、栗山町内のつながりのある農家さんからおいしい野菜を仕入れ、販売しています。取引のある農家さんはなんと60軒以上にも及ぶんだとか。
販売している野菜の特徴やおいしさとともに、作った農家さんのこだわりをお客さんに「届ける」のが、ここ値ごろ市の魅力です。
見て、味わって、野菜を知った上で購入することができる
値ごろ市は農家さんが運営する直売所だからこそ、野菜への愛をひときわ強く感じます。
「農家がどんなこだわりや思いを持って作っているのかってことも含めて、お客さんに届けたいんだよね」
お客さんに届ける工夫は、店内のあちこちにみることができます。
たとえば、野菜を手に取りたくなるような店内の雰囲気や配置。明るくアットホームな雰囲気の店内には、野菜のことを伝えるポップが設置されています。
スタッフさんが野菜やその作り手について詳しいことも値ごろ市の魅力。
今が旬の野菜のこと、そのとき販売している野菜を栽培した農家さんのことはお任せあれ。知りたいことがあれば、スタッフさんに聞いてみると安心です。
なかでも特に素敵なポイントは、値ごろ市で販売している旬の野菜を使ったランチやお弁当を提供していること。
実際に、季節のピザや野菜カレー、定食などに変身した野菜を食べ、気に入ったものを買って帰ることができるのです。
ちなみに値ごろ市のお弁当は、直売所だけでなく栗山町役場の職員さんたちにも親しまれているのだそう。
旬の美味しい野菜を気軽に楽しんでもらいたいという思いで、600円というお手頃価格で提供しているのだとか。
緊急事態宣言も開け、イートインも再開したので、自慢のピザやお弁当、定食などお好きなメニューを楽しんでみては?
1 値ごろ市
◼︎所在地
〒069-1508 北海道夕張郡栗山町湯地95番地
◼︎営業時間
4月~12月 10:00~17:00(変更の場合あり)
◼︎問合せ先名
湯地の丘 自然農園 直売所「値ごろ市」
◼︎問合せ電話番号
0123-72-2743
◼︎Domingoで詳細を見る
値ごろ市
18年前、公園で直売をしたのが「値ごろ市」のはじまり
さて、この値ごろ市が始まったのは、18年も前のこと。
当時行われていた町外の公園での直売のイベントに出店したことがスタートのきっかけだったのだそう。20軒ほどの生産者さんが出店していたイベントで、毎週金曜日に行っていました。
それから渕野さんは別の場所にお店を構え、毎日営業する直売所の営業を始めることに。
そうすると、他の生産者さんからも「野菜出さしてくれない?」とお願いされるようになったのだといいます。というのも特に夏の時期は、キュウリやトマトなどの野菜の育ちが早いので、週に1回の直売イベントを待っていると育ちすぎてしまうから。
そういった経緯で町内のよく知った生産者仲間の商品を取り扱うようになり、現在の「栗山町のおいしいものが集まる」値ごろ市へと進化していったのです。
その後の活動、日々の努力
値ごろ市では、野菜を売るとき「伝える」ことを大切にしています。
ここで売る野菜は、渕野さんたちが直接町内の生産者さんから仕入れたもの。その人がどんな野菜をどんな風に育てているのか知っていて食べているから、安心して販売することができるし、お客さんにそれを伝えることができるのです。
この日私が初めて意識したのは「茄子の種類」。
2種類の形が違う茄子があり、聞くと種類が違うのだそう。
「あのみのりって種類のはほんと柔らかくっておいしいですよ!」と教えてくれます。
渕野さんは、生産者としてお客さんの声を聞けることが嬉しいと話します。
「今年栽培する野菜を決めるとき、 “実際に野菜を食べて、わかってる人たちの声”が聞けることがありがたいんだよね。作物のカタログをみてもわからないことも多いからさ。例えば、”去年ここで買ったETかぼちゃがホックホクで美味しかったです!”とか。会話することで“あのひとが作った野菜”にファンができるのさ。」
なんでも調べればわかる時代でも、情報だけではわからないことがある。
お客さんと生産者がコミュニケーションをはかることで、野菜を通じてお互いにとって良い関係性ができ、「スーパーで買うのよりは高いけど、でも値ごろ市であの人のおいしい野菜を買いたい!」と感じてファンになってくれる人が増えていきました。
渕野さんがこだわるのは取り扱う商品だけではありません。値ごろ市をもっともっとお客さんに親しまれる直売所に進化させるべく、年に数回スタッフも連れて他の直売所を訪れる機会を設けているのだそう。
北海道内はもとより日本中で気になった直売所や生産者さんの元を訪れ、値ごろ市で取り扱う商品を追加することも。
「自分たちが本当においしいと思ったもの、おすすめしたいなと思ったものは仕入れる場合もありますね。値ごろ市にきたらおいしいものに出会えるっていう場でありたいからね」
店舗の接客などを参考にすることも。また、直売所同士が繋がることで、栗山町とその地域の商品をお互いの直売所で取り扱うこともあるといいます。
それぞれの地域のいいものをそれぞれの地域で紹介・販売し合うことで、お客さんも新しいものや地域を知ることができる、いい循環を生んでいます。
夏だけでなく冬も営業している珍しい直売所
夏の野菜ができる時期のみの営業している直売所も多い中、値ごろ市の営業時間は4月〜12月までと営業期間が長いのも特徴です。
冬の営業では、栗山町産の大豆と麹を使った手作り味噌や漬物、カットかぼちゃなどの加工品をメインに販売しています。
営業期間が長いのは、冬でも栗山町のおいしいものを販売したいという想いのほか、雇用対策という観点もあるといいます。
町内のおいしいものを販売する直売所を運営することで、町に雇用を生み出す。栗山町で経済を循環させ、今後も値ごろ市がまちとお客さんとともに在り続ける未来が見えた気がしました。
今後はもっともっとお客さんとの交流できる機会を増やしていきたい
栗山町への愛は誰にも負けない!という渕野さん。
「栗山町で象徴的なのは蝶々の種類が93もいるってこと。これって本当に自然環境の豊かな地域だからこそなんだよね。あとは、働き者のお母さんたちが本当に多いまちだから、栽培に手がかかる野菜も家族みんなで協力しあって栽培しているんです。だからこそ、値ごろ市では多くのお客さんにおいしい野菜を届けられてるんだよね」
家の中で、町の中で多くの人たちが支え合っているから、新しい挑戦もできるんだという。
今後の展望は?と尋ねると、
「野菜たちの潜在能力を引き出したいですね。それぞれの野菜のおいしさを最大限生かすようなことをさらに追求していきたいな。
あとは、お客さんともっともっと交流したいね。こんな風に料理して食べたらおいしかったとか、渕野さんが作ったこの品種のかぼちゃは本当にホクホクでおいしいねとか言ってくれたり、意見くれたりするお客さんは、たまにしか会わない親戚なんかよりもずっと近い存在。そういう風に、食べてくれる人ともっといろんな形で交流できるような取り組みを増やしていきたいね。」
現在も、味噌づくりの体験会を行なったり、子供向けのお絵かきコンテストを開催していたりと様々な取り組みを行なっているが、このコロナ禍が落ち着いたらもっと交流できる取り組みを増やしていきたいとおっしゃっていました。
栗山という土地、そしてお客さんとのコミュニケーションを大切にする渕野さんが運営する「値ごろ市」、とってもおすすめなのでぜひお立ち寄りくださいね。
1 値ごろ市
◼︎所在地
〒069-1508 北海道夕張郡栗山町湯地95番地
◼︎営業時間
4月~12月 10:00~17:00(変更の場合あり)
◼︎問合せ先名
湯地の丘 自然農園 直売所「値ごろ市」
◼︎問合せ電話番号
0123-72-2743
◼︎Domingoで詳細を見る
値ごろ市
コーディネーター
料理家 松田真枝
北海道在住。昆布を愛するイタリアン発の料理家です。 dancyu シリーズ連載「昆布はどこへ行く。」 エシカルはおいしい!! 「昆布のテロワールを訪ねて」 雑誌、テレビ、新聞、市町村応援レシピ。「海の恵み食の底力JAPAN」料理家レシピ掲載