Domingo編集部
牡蠣をメインにした料理の数々は、一度食べたら忘れられないインパクトを心に残す美味しさです。厚岸湖に面した高台に立地し、防災面での重要性から「防災道の駅」としての役割も担います。
これだけ多機能な道の駅は全国的にも珍しく、日々多くの観光客が訪れています。この記事では、そんな様々な顔を持つ厚岸の道の駅、コンキリエの魅力についてご紹介します。
1. 厚岸・コンキリエとは
2. 国道44号線からアクセスできる道の駅の一つ
3. 「グルメパーク」として牡蠣にスポットを当てた料理がたくさん
4. ピザ・パスタやバーベキューも楽しめる
5. お土産品が充実
6. アクティビティも多種多様
7. 北海道観光マスターの合格者多数!
8. 道の駅・厚岸コンキリエを有名にした伝説のCM
9. 美味しい料理の隣で踊り狂う謎の外国人ダンサー
10. クセになるCMが話題に
11. 今やコンキリエの「顔」として君臨
12. 北海道に4カ所しかない「防災道の駅」に認定
13. 海抜の低い場所から高台まで移動できるよう設置された階段
14. ステキな眺めの展望室は「3・11」の対策本部だった!?
15. お供山から見える美しい景色
厚岸・コンキリエとは
厚岸・コンキリエは、厚岸湖・太平洋を見渡せる高台に立地しています。展望室まで足を運べば、北海道初の海上橋である大きな赤い橋「厚岸大橋」や、その先の美しい山々の自然まで見通せます。
建物の形は、厚岸の特産品である「牡蠣」の貝殻をイメージしたもので、とてもユニークなデザインです。
まずは、厚岸・コンキリエがどんな施設なのか、概要をご紹介します。
国道44号線からアクセスできる道の駅の一つ
厚岸・コンキリエは、帯広・釧路・根室方面に出かけたことがある人なら、ひょっとしたら休憩などで寄ったことがあるかもしれません。釧路方面から根室に向かって国道44号線を進み、標識に従って高台に登ると、コンキリエの駐車場が見えてきます。
北海道じゃらん道の駅満足度ランキングでは、飲食部門11年連続No.1という快挙を成しとげています。また、北海道開発局が行っている「スタンプラリー完走者が選ぶ北海道道の駅ランキング2020 」では、以下の部門で第1位を獲得しています。
- ゆっくり休憩できたと感じた道の駅
- 長時間滞在したい道の駅
- いちおしの“おいしいもの”(牡蠣)
「グルメパーク」として牡蠣にスポットを当てた料理がたくさん
古くから海産物が獲れる豊かな地域として知られていた厚岸は、日本国内で一年中牡蠣が水揚げされる、とても珍しい場所です。そのため、レストランではたくさんのオリジナル牡蠣料理が、季節を問わず楽しめます。
その秘密は、厚岸の環境が特別なことに由来します。厚岸湖と厚岸湾という、美味しい牡蠣が育つのに適した環境が整っていることで、通年牡蠣を出荷できるのです。
海水・淡水の中間の塩分を持つ汽水湖である厚岸湖と、厚岸湖に直結する厚岸湾は、牡蠣にとって豊富な栄養分を取り込みやすい環境です。外界からやって来るプランクトン豊富な海水と、山・湿原の栄養分を含んだ淡水が混じり合うため、牡蠣の成長に適しています。
また、低い水温は牡蠣の成長を遅らせ、養殖の時期をコントロールするのを助けます。こうして、美味しい牡蠣を通年出荷できる環境が整います。
レストラン「エスカル」には多くの人気メニューが並び、中でも長年人気を維持しているものの一つが「かきぶた合戦丼」です。牡蠣と豚を一緒に合わせた丼という斬新なメニューは、2021年12月時点で人気No.2となっていて、2010年の登場以来多くの訪問客を魅了しています。
カキフライを一口かむと濃厚なコクと甘みを感じ、タルタルソースをつけなくてもカキの旨味を味わえます。豚は浜中町のブランド豚である「北海道はまなか ほえいとん」を使っており、柔らかくもかみ応えのあるジューシーな肉はご飯にピッタリです。
牡蠣・豚の食べ方の順番は、公式には特に決まっていませんが、牡蠣を乗せるための白い皿が用意されているので、豚と一緒に食べずにセパレート式で牡蠣を味わうこともできます。お客さんのことを気遣い、さりげなく複数の食べ方を提案できるところに、ホスピタリティの高さが感じられます。
ちなみに、2021年12月現在、エスカルでのNo.1メニューは「あっけし牡蠣ステーキ丼」です。牡蠣をステーキにするという発想は、こちらも斬新で驚かされます。
こういった斬新なメニューの数々は、コンキリエの各施設の代表者が考案することが多かったようですが、雑談の中でアイデアが浮かんだり、スタッフが出張に出かけた際に他のお店のメニューを見て思いついたりすることもあるそうです。
他のスタッフおすすめの品を聞いてみたところ、
厚岸で古くから海の安全を守る弁天神社がある「弁天島」を模した「かき弁天島丼」や、
北海道名物のザンギと牡蠣が一緒に食べられる「ザンカキ定食」など、食べ応えのある美味しい料理が盛りだくさんです。
ピザ・パスタやバーベキューも楽しめる
厚岸・コンキリエでは、北海道でこそ有名な「厚岸産の牡蠣」の知名度を全国区にすべく、数多くの試みを行っています。グルメパークのコンセプトである「ワクワク・ドキドキ」を大切に、牡蠣の様々な食べ方を提案していて、牡蠣のピザ・パスタやバーベキューが食べられるお店もあります。
「オイスターバール・ピトレスク」では、厚岸の町を一望できるロケーションで、新鮮な牡蠣とウイスキーが楽しめます。
自家製生地とトマトソース・北海道産チーズで焼き上げるオイスターピッツァや、
牡蠣とアサリをふんだんに使用した和風パスタなど、軽食系のメニューが食べたい人におすすめです。
また、バーベキューでとれたての食材を味わえる「炭焼 炙屋」では、年間5~6千食が売れる名物メニュー「元祖バケツ牡蠣」もおすすめです。牡蠣を10個バケツで酒蒸しする豪快なメニューで、コンキリエの名物の一つです。
お土産品が充実
厚岸でしか手に入らない品々がそろうのも、コンキリエの魅力です。お土産としては定番のものからオリジナリティあふれるものまで、幅広い品ぞろえとなっています。
厚岸コンキリエのオリジナル製品シリーズ「金’s☆オイスタープレミアムシリーズ」は、牡蠣の濃厚な煮汁から作られる贅沢な調味料です。金のかき醤油は、卵かけご飯などシンプルな料理に使うことで、普段使う醤油とは違う濃厚な味わいを感じられます。
厚岸オイスターソースも人気の逸品で、一般的なオイスターソースと違って色が濃くないのに味が濃いため、サラダのドレッシングや焼き肉のタレ、隠し味など幅広く使えます。
地元企業が製造しているレトルトカレーも人気のお土産品で、ズワイガニ・たらばがに・ほたて・かきなどバラエティに富んだ具材が入っています。家に帰ってからも、厚岸の贅沢な味覚を楽しめます。
アクティビティも多種多様
厚岸・コンキリエでは、通年楽しめるアクティビティとして、2016年からウイスキーの蒸溜を開始した「厚岸蒸溜所見学ツアー」を行っています。
厚岸の冷涼で湿潤な気候はウイスキー作りに適しており、スコットランド・フォーサイス社製のポットスチルとマッシュタン、ミズナラの熟成樽を使った熟成環境など、蒸溜所には最高の設備が揃っています。
通常は立ち入ることのできない環境ですが、ツアーでは、コンキリエのガイドと一緒に敷地内を見学することができます。
見学後は、オイスターバール・ピトレスクでシングルモルトウイスキーが試飲でき、一般流通していない銘柄も味わえます。また、ツアー参加特典として、厚岸蒸溜所ロゴ入り木製キーホルダーがもらえます。
季節によって異なるアクティビティを楽しめるのも、四季が美しい厚岸・コンキリエならではの体験です。夏は、手つかずの自然を満喫できる「別寒辺牛湿原カヌーツーリング」や、大粒のあさりを持ち帰れる「あさり掘り体験ツアー」の他、厚岸の絶景を目指すサイクリングツアーが楽しめます。
冬は、原生花園あやめが原の林道を岬に向かって歩くバードウォッチング、厚岸湖・厚岸湾の美しい風景を一望できるハイキングなどのプログラムなどがあります。ハイキングで向かう「お供山」では、アイヌ民族が狩猟や埋葬の拠点としたと考えられている「チャシ」跡も見られます。
北海道観光マスターの合格者多数!
厚岸・コンキリエのスタッフの皆さんは、忙しい仕事の合間に勉強して「北海道観光マスター検定」を受験しています。令和3年度の合格率は42.7%と、受験者の半分以上が不合格になる試験です。
しかし、厚岸・コンキリエでは、例年合格者を輩出し続けています。その秘訣は、札幌での講習会で得た情報を受験するスタッフ全員が共有し、合格に向けてみんなで勉強すること。
スタッフの皆さんが検定試験を受ける理由は「道の駅に来てくれた人のために、北海道観光のプロフェッショナルでありたい」という真摯な姿勢から。観光客以上に北海道について熟知していることを、スタッフのミッションとしているため、観光客は安心してスタッフに旅程や観光スポットについて相談できるのです。
道の駅・厚岸コンキリエを有名にした伝説のCM
厚岸・コンキリエが有名になったのは、もちろん道の駅としてのコンセプトが優れていて、料理の美味しさや滞在のしやすさ、スタッフのホスピタリティなどが評価されてのことです。しかし、その存在を広くアピールすることになったのは、あるCMがきっかけの一つでした。
美味しい料理の隣で踊り狂う謎の外国人ダンサー
北海道でテレビを見ている人なら、一度は見たことがあるかもしれないこのCM。実は、YouTubeチャンネル「道の駅 厚岸味覚ターミナルコンキリエ」でも配信されています。
ファンキーなナレーションで厚岸・コンキリエの名前がリフレインされ、映像を見た人は無意識にダンサーの踊りと厚岸・コンキリエの名前を覚えてしまうという、CMとしては非常に効果的な映像作品です。テレビ番組の特番にも取り上げられたほどで、厚岸・コンキリエの知名度を上げるきっかけの一つになりました。
クセになるCMが話題に
牡蠣で有名な厚岸の道の駅、 #厚岸コンキリエ のCMがTLに流れてきて大笑いする。調べてみたら話題になっとる。そりゃそうだよこのぶっ飛び具合
— ちひろ (@tihiro) November 22, 2021
外国人が軽快ダンス! 北海道の「道の駅」テレビCMが斬新すぎて、告知が頭に入ってこないhttps://t.co/i3FeNB1p7Jhttps://t.co/HbmolU5Uef
美味しそうな牡蠣や料理の横で、悩ましい目線を向けつつ官能的・パワフルなダンスを踊る、マッチョな謎の外国人ダンサー。そのCMのインパクトは強烈で、商品の情報がまったく頭に入ってこないという意見も。
確かに、自宅で映画を観ていて、CMでこの映像が流れた時の驚きは大きいかもしれません。しかし、逆に「厚岸・コンキリエって何?」と視聴者に疑問を抱かせる意味では、大成功したものと推察されます。
ちなみに、このダンサーは、国籍・名前・年齢などは一切不明。CM制作会社・コンキリエともに面識はないとのこと。
それゆえに「謎のダンサー」として、多くの人の知的好奇心を刺激しています。もし、世界のどこかでCMに自分のダンスが使われていることを知ったら、いつの日かコンキリエでダンスを踊ってくれる日が来るのかもしれません。
今やコンキリエの「顔」として君臨
コンキリエの正面入口には、謎のダンサーが熱く踊っているワンショットが飾ってあります。筆者は最初、厚岸出身の柔道選手かと思いましたが、間近で見てみて「CMの人!」と驚きを隠せなかったのを覚えています。
ロビーでは、クリスマスツリーと一緒に存在感を示しています。ツリーの下に置かれているプレゼントは、ダンサーのファンからでしょうか。
階段近くの自動販売機コーナーの横には、ダンサーになれる顔ハメ写真が用意されています。謎のダンサーは、コンキリエのあらゆる場所で、厚岸を盛り立ててくれているようです。
北海道に4カ所しかない「防災道の駅」に認定
厚岸・コンキリエには、グルメパークの他に、もう一つ「防災道の駅」としての重要な任務があります。防災道の駅とは「都道府県の地域防災計画等で、広域的な防災拠点に位置付けられている道の駅」のことです。
防災道の駅に選定されることで、防災拠点として役割を果たすための重点的な支援が、国土交通省によって行われます。また、選定にあたっては以下のような厳しい要件があり、それらを満たさなければなりません。
- 建物の耐震化、無停電化、通信や水の確保等により、災害時においても業務実施可能な施設となっていること
- 災害時の支援活動に必要なスペースとして、2,500㎡以上の駐車場を備えていること
- 道の駅の設置者である市町村と、道路管理者の役割分担等が定まったBCP(業務継続計画)が策定されていること
続いては、防災という観点から、厚岸・コンキリエを紐解いてみましょう。
海抜の低い場所から高台まで移動できるよう設置された階段
厚岸・コンキリエが建つ高台は、周囲をぐるりと歩き回れるようになっていて、道路側と住宅地側の2ヶ所に避難用階段が設けられています。海抜の低い場所からコンキリエまで速やかに避難できるよう、鉄骨階段が高台の下から上まで続いています。
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震による津波が大きな懸案事項である厚岸町では、津波への対応が特に重視されていて、コンキリエには防災拠点としての機能が期待されています。
建物内には、投光器・発電機・簡易トイレ・ジェットヒーター・観光防災Wi-Fiステーションなどの設備が整っていて、万が一の備えは万全です。
ステキな眺めの展望室は「3・11」の対策本部だった!?
厚岸・コンキリエの4階には展望室があり、厚岸の町をパノラマで見渡せます。観光客にとっては素敵な眺めの展望台ですが、2011年3月11日に起こった東日本大震災時は、厚岸町の災害対策における司令塔としての役割を担いました。
厚岸湖・厚岸湾は、住民に恵みをもたらす半面、太平洋沖で地震が起こればその影響を受けやすいため、大震災後の津波に備える必要があったのです。
上の画像は、厚岸津波ハザードマップの一部です。
厚岸町の中心地は、厚岸大橋をはさんで北の湖北地区・南の湖南地区に分かれており、それぞれの地区で海または湖に面していることから、居住区のほとんどが「津波浸水予測5~10m」となっています。
コンキリエの敷地は、ハザードマップにおける①・②番が該当します。 このことから、湖に近い立地で、かつ高台のコンキリエは、湖北地区の住民の避難場所として重要な拠点であることが分かります。
お供山から見える美しい景色
厚岸町・湖南地区の避難場所として重要なのが、標高80m程度の山「お供山」です。しかし、住民の避難場所としてだけでなく、厚岸観光で外せないスポットでもあります。
お供山の展望台は、厚岸のみならず道東屈指の景勝地と言っても過言ではない、穴場ビュースポットの一つです。かつては木の階段で登らなければなりませんでしたが、現在は津波避難場所として整備され、鉄骨階段が設置されています。
踊り場にはソーラー式の常夜灯が備え付けられており、暗い夜でも足場を確認しながら階段を登れます。階段の段数が多いので、ちょっとしたハイキング気分ですが、踊り場で休憩しながら登れば体力を温存できます。
階段を登っていくと、次第に町が小さくなっていきます。展望台から見る景色に期待が高まります。
階段を登り切ると、砂利が敷き詰められた広場がありました。こちらが避難場所として機能するのでしょう。
橋を渡って展望台に向かう途中、看板が見えてきました。
鹿落としとしてチャシが機能していたため、壕跡を渡るために橋が必要だったのですね。
橋を渡ってさらに奥へ進むと、木でできた展望台が見えてきました!ロープを使ってアスレチックのように昇り降りすることもできるようですが、今回は内部にある階段を利用して頂上へ。
展望台から見る風景は圧巻で、厚岸大橋の美しさ・厚岸湖の雄大さに言葉を失います。湖を色々な方向から撮影しようとして、小さなほこらを見つけました。
この小さなほこらこそ、厚岸を古くから見守ってきた「弁天神社」で、牡蠣の殻でできた島に建っています。
かつては神社の隣に保養所や料亭などが建てられていて、大変賑わっていたそうですが、地盤沈下が進む中で神社だけが取り残されてしまいました。しかし、社の中には弁財天座像が祀られていて、今なお厚岸の人々を守り続けています。
まとめ
以上、厚岸の道の駅・コンキリエについて、周辺情報も含めご紹介してきました。厚岸・コンキリエは、グルメパークとして多くの観光客の舌をとりこにしていますが、アクティビティも充実しており、防災拠点としても重要な役割を担います。これほど多彩な顔を持つ道の駅は、全国的にも珍しいはず。
観光だけでなく、北海道への移住を検討している人にとっても、防災体制が整う厚岸は魅力的な選択肢かもしれません。
興味がわいてきたら、迷わずあなたも厚岸・コンキリエにCome On!!
ライタープロフィール
美味いもの・面白いもの・旅行と車中泊が好きな道産子ライター。アシスタントの妻は群馬県出身。オンラインスキルマーケット「Coconala(ココナラ)」にて各種ライティングに携わり、専業ライターとして独立。北海道中をマイカーで走り回り、面白そうな場所・美味しそうな店を探し続ける。
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