Domingo編集部
3月に入り最高気温もプラスになり、少しずつではありますが春を感じる季節になってきましたね。本格的な春はまだまだ先ですが、それでも日に日に長くなる日照時間と暖かくなる気温が心までも暖かくしてくれるような、そんな気持ちを感じます。
今回ご紹介させて頂くのは、同じ地域おこし協力隊として標茶町で活躍する小濵真人さん。
小濵さんは4年前、千葉県の房総半島から標茶町へ移住してきました。元ムツゴロウ王国出身で、千葉県館山市の乗馬クラブで長年外乗のガイドを経験するなど、生き物全般のプロフェッショナルです。馬だけでなく様々な生き物に精通し、たくさんの自然がある標茶町で自然と共に生きる生活を送っています。
1. 北海道和種馬の存続
2. 調教の繊細さ
3. 小濵さんが伝えたい「乗馬の本当の魅力」
4. 標茶町だから出来ること
北海道和種馬の存続
厳しい北海道の自然を生き抜いてきた北海道和種馬は、調教という面において西洋の馬たちより難しいと言われており、現状では肉として消費されていることが多いそう。
「このままでは将来的に北海道和種馬という種が絶たれてしまうのではないか。」
数少ない日本原産の馬の将来に、小濵さんは危機感を持っています。
「北海道和種馬を扱える人は少ないけれど、色んな馬を調教してきた経験からすると北海道和種馬も十分に乗用馬として通用するはずなんです。むしろ体も日本人向けに小さく、揺れが非常に少ない歩様を持っているので、乗用馬としてのメリットは大きいと思います。」
和種馬の乗用馬としての素質がもっと広く認められれば、本来の目的である和種馬の存続に大きく貢献できるのではないかと小濵さんは考えています。
調教の繊細さ
「特に繊細な北海道和種馬は一度でもトラウマを作ってしまうと、直すのに膨大な手間と時間がかかってしまいます。トラウマにならないように少しずつ、ゆっくりと関係を築いていくことが大切なんです。」
特にまだ小濵家に来て日が浅いセンとは、調教の前段階である絆作りに時間を割いているそう。
「ボロ(糞)を取る時に少しでも一緒に同じ空間にいたり、直接コミュニケーションを取らなくても一緒の時間を共有するだけで少しずつ信頼関係ができてくると思っています。調教以外の時間が実はとても大切なんです。」
と小濵さんは慈愛に満ちたまなざしで教えてくれました。
そして今回はセンだけではなく、もう一頭いるキズナの調教も見せてもらいました。いくつかの段階を経て、ようやく上に乗れるかどうかという段階だそうです。
後ろから追いやるように馬をプレッシャーで押していき、左手で回転方向を促します。人によっては鞭を使用する方もいるようですが、小濵さんは気持ちと声で圧をかけていました。
後ろから手綱を持ち、進行方向を指示しながら歩く擬似乗馬の調教です。ここまで来れればあとは上に乗っていく段階です。
敢えて雑に乗ることで、馬に上に乗るときの刺激に慣れさせます。また、いきなり座ってしまうと高いところから見下ろされる感覚が苦手な馬もいるため、この姿勢で上に乗るのを慣れさせていくんだそうです。
小濵さんが伝えたい「乗馬の本当の魅力」
現在の乗馬クラブでは、誰が乗っても安全でおとなしく、優しい馬が乗用馬となることが多いですが、それは見方を変えると馬も人も心を閉ざしてしまっていのではないか。また、機械のように同じコースをただ人を乗せて歩くことでは、馬という生き物との理解は深まらないのではないか。このように小濵さん自身が過去に乗馬クラブで経験したことを経て、いま標茶町で「本来の乗馬」を楽しめる空間をつくりたいと考えています。
標茶町だから出来ること
自然の中で動物たちと暮らしながら、北海道和種馬の未来に思いを馳せる。
小濵さんの今後の活動にも注目していきたいと思います。
また、そんな小濵さんを映像で追った「標茶人物伝」をYouTubeでご覧いただけます。ぜひこちらもご覧いただき、みなさんにも小濵さんの活動や想いを知っていただけるとうれしいです。次回もぜひお楽しみください。
筆者プロフィール
標茶町地域おこし協力隊・写真家・映像クリエイター 中道 智大
1988年千葉県野田市出身。小さい頃から動物や自然が大好きで20代の頃はドッグトレーナーとして様々な犬の訓練に携わる。5年前から自然と動物達の写真と映像制作を始める。現在、北海道標茶町の狼20頭が飼育されていた森で犬4頭と自然暮らしをしている。『人と動物の関係性』をテーマに各SNSにて作品を発表中。