喉越しすっきり、甘い芳香 「最高峰の牛乳」を生み出した“放牧”の力|Domingo

喉越しすっきり、甘い芳香 「最高峰の牛乳」を生み出した“放牧”の力

ひと

天塩町

酪農が盛んな北海道北部の町、天塩町。そこには、230ヘクタール(東京ドーム約50個分)という広大な牧草地に140頭の牛が放牧されている「宇野牧場」があります。

1945年に創業し、現在は宇野剛司さんが3代目社長。2005年の就農以来、これまでの日本の酪農の概念をアップデートするさまざまな取り組みに励んできました。

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意識を変えた、ニュージーランドの牧場の姿

今でこそ先頭に立ち牧場を切り盛りする宇野さんですが、幼いころから酪農家として忙しく働く両親の姿を見てきたため、当初は家業を継ぐ気はあまり無かったそう。しかし、酪農学園大学へ進みニュージーランドの酪農を知ったことで意識が大きく変わります。

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ニュージーランドの経済は畜産物の輸出により支えられているため、牛の飼育にはできるだけコストをかけたくありません。そのため、牛舎でさまざまな設備を活用しながら飼育する日本のようなスタイルではなく、昼夜問わず屋外で飼育し、牧場に生える草を餌にすることで自然に健康的な牛を育てる“放牧”が基本でした。

酪農が持つイメージを大きく変えたい

宇野さんは現地でもその飼育スタイルを体験し、驚きました。搾乳量が増えるよう穀物などが配合された飼料を食べている日本の牛と比べ、草だけを食べている牛の乳の方が、明らかに品質が良いのです。

「品質だけではありません。放牧を導入できたら長時間の世話は必要もなくなり、ゆとりが生まれます。酪農はいわゆる3K労働と言われ、さらに朝が早く休みも無く働き続けるというイメージでしたが、そんなマイナスイメージを払拭できると確信したんです」

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そうして宇野さんは、大学を卒業した2005年に家業を継ぐことを決心。宇野牧場に、ニュージーランドで学んだ手法を少しずつ取り入れていきました。

健康的な牛は、健康的な食生活で生まれる

良い牛乳を作るためには牛たちの食事にも気をかける必要があります。宇野牧場では穀物類は一切与えず、冬季を除き栄養価が高い生えたての若葉をだけを食べさせています。

「父が病気をしたことも、牧草100%での飼育に切り替えるきっかけになりました。体を壊したときは、栄養たっぷりのものを食べるのが大切。良い牛乳は健康にも良いのではと考えたんです」

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牧草だけで栄養を得た牛乳にはオメガ3脂肪酸をはじめとする有益な脂肪酸、ビタミンなどが多く含まれます。宇野さんは牛たちの栄養バランスを考えて5種類の牧草を植え、化学肥料などを使わずに土の力で育成。牧場は牛たちが半日で食べ切れるスペースに区分けされており、半日ごとに次の区画へ移すことで、常に新しい若葉を食べられる環境に仕上げているのです。

こだわり抜いた「最高峰の牛乳」、そこから生まれる「オーガニックドリンクヨーグルト」

そうして生み出される牛乳は、2020年に「宇野牧場史上 最高峰の牛乳 に辿り着きました。」の商品名で製品化。有機飼料、有機畜産物、有機加工食品の3つの有機JAS認証を取得しました。

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すっきりした喉越しと柔らかく甘い芳香により、幅広い年代のファンを日々増やしています。

また、自慢の牛乳はさまざまな製品に加工され、「オーガニックドリンクヨーグルト」も人気商品の1つ。

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国によるとヨーグルト1mlの中には1000万個以上の乳酸菌が含まれているとされますが、こだわり抜いて牛や土、草を育てた結果、宇野牧場のヨーグルトには5億2000万個の乳酸菌が発見されているそうです。

5つのフレーバーで人気を集める「トロケッテ・ウーノ」

もう1つの人気商品は、かつて酪農家の間でよく作られていた牛乳豆腐を参考に開発したスイーツ「トロケッテ・ウーノ」です。

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牛乳豆腐は宇野さんにとっても子どもの頃によく食べた思い出の味。本来は酢の力でタンパク質を凝固させ作られてきましたが、どうしても独特の酸味が残ってしまいます。そこで豆腐と同様にニガリを使い、搾りたてのおいしさを損なわない工夫を施しました。

ほのかな甘み、なめらかな食感など、今までにない牛乳の飲み方が楽しめそう。5つのフレーバーがラインナップされており、贈り物にもおすすめです。

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終わらない挑戦、守っていきたい地元への愛

宇野さんの挑戦はまだまだ終わりません。現在は職人の知恵を借りながら、自慢の牛乳を使ったチーズを試作中。また、高品質の牛乳や乳製品を作ることで天塩町そのものの魅力が広まることを願っています。

「離農者が増えることは、天塩町の存続にも関わります。大げさかもしれませんが、僕が酪農の魅力を広めていくことで町を盛り上げ、守っていきたいんです」

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そんな思いを胸に、これからも心血を注ぎ牛たちを育ていく。宇野さんの酪農家としての情熱は、まだまだ燃え続けていきます。

ライタープロフィール

雑誌・書籍編集者&ライター 山下 恭平

ラジオ局で番組制作の仕事をしながら、ミニコミ誌の制作や雑誌のライター業を始める。その後、編集者として出版社に入り、タウン情報誌をメインにさまざまな記事を手掛けてきた。好きなことは料理、山登り、川釣り、札幌の石碑。札幌市南区在住で、南区をこよなく愛している。

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