Domingo編集部
温泉やウィンタースポーツを目的に、毎年多くの人々が訪れるニセコ町。もしこの場所に「鉄道の開通」という出来事がなければ、いま大人気のニセコ町はなかったかも?
そんな歴史を知ることができるのが、2021年に公開を開始した「ニセコ鉄道遺産群」です。
2014年に転車台、2017年にはSL、そして2020年にはニセコエクスプレスが公開され、鉄道ファンの心を掴んで離さないこのスポット。2030年までの廃止が決まったニセコ駅のすぐ隣に位置し、鉄道で訪れるファンも多いのだとか。
ニセコ駅で下車し、鉄道遺産の方に向かっていくとまず目に入るのは、屋外に展示されている蒸気機関車「9643」。レールの上に鎮座した真っ黒で重厚な車体にはライトも点灯し、今にも動き出しそうな臨場感!
この蒸気機関車「9643」は、1914年川崎造船にて製造されたもの。2022年現在で108歳ということになります。1974年の廃線まで走り続け、引退後は札幌市にあるサッポロビール園で保存されていました。
ニセコ町に移設してからは、長くきれいな状態でたくさんの人に見てもらいたいとの思いから、上屋を設置し、塗装や修復を施した後、2019年から展示を開始。今も汽笛を鳴らすこともできるのだそう。日によっては、地域おこし協力隊の方が説明や案内をしてくれることも。
SLを横目に進んでいくと、大きな円の上に橋がかかっているような、何やら見慣れないものが目に入ってきました。
この見慣れない設備は「転車台」。列車の向きを変えるために使われるものです。 1957年に製造、新得町で活躍していたこの転車台は、「C62ニセコ号」の運行のために1989年にニセコに移設されました。その後5年ほどで「C62ニセコ号」が廃止になり転車台も現役を引退。それから人の目に触れることはありませんでした。
2011年より、ニセコ町がこの転車台とその歴史を多くの人に見てもらおうと動き出し、2014年から展示を開始。ちなみにこの転車台、手動でも電動でも動かすことができるように整備されています。
そして、ここで振り返ると目の前に現れるのが、こちらは見覚えがあるという方も多いであろう「ニセコエクスプレス」です。
この「ニセコエクスプレス」、実は1988年にJR北海道苗穂工場で製造された 「道産子車両」。冬はニセコエリアと新千歳空港を結び、それ以外の時期は全道各地を走りました。
2017年の廃車後、クラウドファンディングにより保存が実現。2020年夏、ニセコ町への里帰りを果たしました。
ちなみに、ニセコエクスプレスも転車台で向きを変えたのだそう!
さて、ここでニセコの歴史を紐解くために、少し離れた視点から「ニセコ鉄道遺産群」を見てみましょう。
SLの奥にはニセコ駅が、ニセコエクスプレス・転車台の右側には「ニセコ中央倉庫群」があります。このニセコ中央倉庫群、現在はテレワークや作業、展示などに使えるスペースがあったり、人気のスープカレー屋さんが入っていたりと、多くの人が集まれる施設になっています。
ニセコ中央倉庫群 施設案内
https://www.nisekosoukogun.com/institution/
一見、ニセコ駅や鉄道遺産群とは関係がないように思われる中央倉庫群ですが、実はこの3つが揃っていなければニセコのまちが発展していなかったのかもしれません。
ニセコに鉄道が開通したのは、1936年。今のニセコ町と真狩村の間を結び、じゃがいもを中心とした農産物を輸送するために鉄道が開通しました。
真狩村から農産物を運び出し、ニセコ駅で一旦荷物を降ろして中央倉庫で保管・加工をし、国鉄に積み替え、全国各地に発送されました。こうして中継点として栄えたニセコの人口は次第に増加。 時代は飛びますが、1988年には「ニセコエクスプレス」、1990年には蒸気機関車「C62ニセコ号」が復活するなど、鉄道と共に栄えてきたまちでもあるのです。
ニセコエクスプレスが入っている車庫の壁には、そんな鉄道の歴史展示もありますので、ぜひご覧ください!