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Domingo編集部
北海道のソウルフードといえば「ザンギ」が有名ですが、北海道の鶏肉料理を語るうえで欠かせないのが、十勝地方を中心に展開する「若どりの鳥せい」です。十勝では「インデアンのカレー」「平和園の焼肉」と並ぶ人気のソウルフード。創業以来50年以上地元に愛され続けてきた、その美味しさの理由を深堀りします。
1971年代に十勝で生まれた「鳥せい」
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本社は帯広から西に車で約40分の清水町にある
酪農の町として知られる十勝ですが、夕食のおかずから酒のお供まで愛されているのが「鳥せい」の若どりです。1971年に前身となる焼き鳥店「とりせい」を十勝清水町に開業し、1978年に「若どりの鳥せい」として1号店がオープン。その後十勝地方を中心に店舗を拡大し、現在は釧路や札幌などを含めて20店舗を展開しています。地元での人気は圧倒的で、普段の食事のみならずクリスマスには普段の3~4倍の売上を記録するなど、地元の大定番として欠かせない存在になっています。
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1983年、本店が新装オープンした際の記念写真
鶏肉、油、職人の腕、どれか一つでも欠けると「鳥せい」の味にはなりません。一つひとつのこだわりが、他にはない味を生み出す決め手となっているのです。今回は十勝の清水町にある本社と、店舗は江別市のJR野幌駅そば「江別野幌店」でお話をうかがいました。
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店舗取材を行った「若どりの 鳥せい 江別野幌店」
人気メニュー「炭火焼き」のこだわり
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こんがり香ばしい焼色がついた「炭火焼き」1,100円(清水本店、帯広地区、十勝地区の店舗では1,050円)
とにかく鳥特有の臭みがなく食べ飽きしないと評判ですが、秘密は鶏肉の飼育にあります。使用するのは、中札内村の契約農場などから出荷される生後30日以内の小雛。「地養素」と呼ばれる、木酢液や海藻、ヨモギなどを配合した特殊飼料で育てられているため、独特の臭みや余分な脂を極限まで減らした“コクのある”肉質に。それを特注の焼き台で仕上げ、最高のうま味を引き出します。
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肉の表面を痛めないよう、特殊なピンセットを使い焼く
鳥せいの“顔”ともいえる定番はなんといっても「炭火焼き」です。ナラ材の炭を使用し、約3~4時間かけて火おこし。火力が安定してきたら、バールで叩いて細かくしたものを焼き台に隙間なく敷き詰めます。こうすることで火力のムラをなくし、まんべんなく一定の熱入れを可能に。一方で、肉の厚い部分や先端など、箇所によって焼き加減を見極め30分ほどかけてじっくりとうま味を引き出していくのだそう。まさに職人の腕がなせる技です。
こちらも人気メニュー「から揚げ」美味しさの訳
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作り置きはせず、注文が入ってから揚げる「から揚げ」1,100円(清水本店、帯広地区、十勝地区の店舗では1,050円)
炭火焼きにならぶ人気メニュー「から揚げ」は、余分な脂を落としている炭火焼きよりもさっぱり食べられると評判です。オリジナルの穀物油により、カラッと軽快な口当たりに。もともと脂身の少ない肉質だけあって、しっかりと鶏肉本来のおいしさを感じることができます。 炭火焼き、から揚げとともに持ち帰りが可能です。鳥せいのメニューは「冷めてもおいしく食べられる」との評判もあって、テイクアウトでの利用が半数をしめるのだとか。
店内は家族で訪れても安心の広さ
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江別野幌店の2代目店主・村瀬友基さん。リズミカル、かつ正確に肉を焼く様子はまさに職人技
江別野幌店は1980年にオープンした、長年愛されてきた店舗の一つ。8年前に地域の再開発に合わせて現在地に移転しました。炭火焼やから揚げのほか、焼き鳥やサラダ、一品物など居酒屋らしいメニューもあり、そのどれもが人気。仕事帰りの会社員の居酒屋利用だけでなく、家族連れの夕食利用でも賑います。
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店内はボックス38席、小上がり32席、カウンター4席
広々とした店内には炭の香りが漂い食欲がかきたてられます。JR「野幌」駅から徒歩4分程度の好立地で、近年は「エスコンフィールドHOKKAIDO」のシャトルバス発着点ということもあって試合帰りの野球ファンも多く訪れるのだとか。満席が心配な場合は事前に連絡を。また、焼き上がりに時間がかかるため、テイクアウトの際は事前に電話予約をすればスムーズです。
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店を切り盛りする村瀬一家。左から登美子さん、友基さん、さち子さん
※価格は全て税込
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ライタープロフィール
雑誌・書籍編集者&ライター 山下 恭平
ラジオ局で番組制作の仕事をしながら、ミニコミ誌の制作や雑誌のライター業を始める。その後、編集者として出版社に入り、タウン情報誌をメインにさまざまな記事を手掛けてきた。好きなことは料理、山登り、川釣り、札幌の石碑。札幌市南区在住で、南区をこよなく愛している。