エゾシカを地域資源に!人と社会をつなぐ場所づくりを目指す「ジビエ大滝」と「シカトモ」|Domingo

エゾシカを地域資源に!人と社会をつなぐ場所づくりを目指す「ジビエ大滝」と「シカトモ」

伊達市

ひと

美しい紅葉と清流で人気の「三階滝」を有する北海道伊達市大滝区。
自然豊かなこの場所で今まさに始まろうとしている、地域の魅力を活かした2つの挑戦をご紹介します。

■エゾシカを害獣から地域資源に



今回の主役は2018年に大滝区へ移住し、2021年3月まで地域おこし協力隊として活動してきた天野雅文さん。

地域おこし協力隊の任期中は大滝の魅力を写真や映像で伝えたり、抜群のロケーションを楽しみながらまちを知ってもらうイベントなどを企画してきました。もっと大滝区の役に立つ方法はないかと模索していたある日、地元の猟師さんと出会います。

増えすぎたエゾシカによる農作物の食害は大滝区でも深刻で、対策費がかさんだために離農する農家さんも少なくありません。ハンターの担い手も少なく、なかなか打開策を打ち出すことが難しい状況でした。しかしその一方で、猟師さんからもらって初めて食べた鹿肉の美味しさに、天野さんは感動を覚えます。

元々狩猟に興味があった天野さん。自らも狩猟免許を持ちハンターとしての修行を始めました。最初の数カ月は先輩ハンターの指導を仰ぎながら猟の基本や解体方法を学び、2019年の春から独り立ちして山に入っています。雨の日以外は出勤前に毎日出猟し、現場での研鑽を積み、これまでに50頭以上を仕留めました。山に入る際、腕には心配する奥さまからプレゼントされたGPS付きの腕時計が。

こうしてハンターとしての力を上達させていった天野さんですが、次の課題は仕留めたエゾシカの処理方法です。鹿肉は「獣臭い」「固い」というイメージがありますが、それはお肉の処理の仕方の問題だそう。正しい手順で迅速に処理された本来の鹿肉のおいしさを、より多くの人に知ってもらい、大滝区の特産品として育てていきたいという思いが「ジビエ大滝」の設立につながります。

■旧給食センターを改装「ジビエ大滝」



ジビエブームや高たんぱく・高鉄分・低カロリーな食材としての認知度が高まっている鹿肉ですが、それでもまだまだ身近とは言えません。その理由の一つが「処理施設」の少なさ。せっかく仕留めたエゾシカも、的確に処理できなければそのおいしさは正しく伝わりません。また保健所の許可が下りた施設が近隣に無く一般流通に乗せることはできないため、大滝地区ではこれまでどんなにおいしい鹿肉もすべて自家消費に留まっていました。

そんな中で天野さんが巡り合ったのが、使われなくなっていた給食センター。こちらを食肉処理施設としてリフォームし、道内でも最高レベルの衛生環境でエゾシカをはじめとするジビエの加工・販売を目指しています。

害獣として疎まれてきたエゾシカを資源として活用していくことで、結果的に農林業被害やロードキル(交通事故)を軽減し、人間との共存につながっていくと、天野さんは期待を込めています。

■コミュニティカフェ「シカトモ」



「ジビエ大滝」とともに進めるもう一つの挑戦が、「ジビエ&コミュニティカフェ シカトモ」の創設です。
自ら仕留め、加工したおいしい鹿肉を使ったランチを、お客様に提供する場所であるとともに、天野さんにはもう一つ「シカトモ」に込める願いがあるそうです。

天野さんには発達障害という個性を持って生まれた、15歳になる息子さんがいます。目に見えない障害ゆえの生き辛さに寄り添い、これまで幾度となく悩み、そして乗り越えてきました。
人との関わりが原因で一度は絶望の淵に立っていた息子さんが、再び前を向くことができたきっかけは、やはり人との出会いがきっかけでした。そして同じように悩み続けていた天野さん夫婦の心の支えになったのも、理解し応援してくれる周りの人たちの温かさだったのです。

「自分たち親がいなくなったら、この子は幸せに暮らしてゆけるのだろうか?」
「困ったときに相談できる人や、安心できる場所があるだろうか?」

自らの経験を生かし、「いつでもどんな人でも、人や社会と繋がることができる場所を作る」。それが天野さんが「シカトモ」に込める願いです。

「シカ」肉という食を通じて誰もが「トモ」だちになれる場所であり、誰にも「シカト」されることなく安心して過ごせる場所。ゆくゆくは子供達が考えたレシピコンテストや、様々な背景を抱える子供たちが安心して社会経験を積むことができるよう、障害児通所支援施設との連携も計画しています。

「シカトモ」は2021年のGWに合わせてプレオープン、その後は平日月・火・木・金曜日のランチ営業を開始予定。現在の開業資金の一部を集めるためのクラウドファンディングを実施中。気になる方はぜひご覧ください。
https://camp-fire.jp/projects/view/401868

ライタープロフィール

編集ライター 佐藤 大輔

旅行会社→世界一周→旅行雑誌社を経て故郷室蘭にUターン。室蘭市初の地域おこし協力隊としてまちの観光PRやアウトドアイベントの運営に携わり、現在はBROCKEN(ブロッケン)の屋号で、各地のクリエイターと協働し雑誌やWebの企画編集やロゴデザイン・映像制作など広く請け負う。