Domingo編集部
地元・十勝で、地域の人にも開かれた宿泊施設が誕生
柏尾さんは坂口さんに「みのやさんの跡地で何かやりませんか?」と声をかけます。宿をやりたかったという坂口さんの思いを知っていたからこそ、柏尾さんも声をかけたのでしょう。とはいえ、資金も必要だし、東京のお店もまだ開いています。それでも坂口さんは、地元である十勝にいろいろなことを感じ始めていました。
閑散とした街でも、うまく人を巻き込んでいけばきっと大丈夫。15年もの間、東京で飲食店を経営してきた経験と自信が、後押ししてくれました。それが2014年のこと。
『HOTEL NUPKA』が開業したのは、そのさらに2年後の2016年3月のことです。バジェットトラベラー向けのドミトリーは、ビジネスホテルなどが多い帯広の市街地のなかでも異彩を放っていました。もちろん、コンパクトな個室、さらに広めのダブルやツイン、トリプルルームも用意し、あらゆるニーズに対応できる宿泊施設になっています。
そして旅行者が泊まる場所としてだけでなく、カフェが街に開かれているのも特徴。地元の人が朝食を食べにフラッと訪れてくれることも多く、「地域の公園でありたい」という坂口さんの希望が実現しています。
十勝の街が活気付いたら、今度は「歩ける街」を目指したい
カフェでは、十勝の食材を作ったローカルフードの提供にこだわりました。十勝産大麦麦芽を100%使用した、オリジナルのクラフトビールも製造・提供しています。十勝は日本有数の農業生産地ですが、意外と生産者と地元の消費者がつながる場所がありません。「だから、NUPKAを、十勝の街中と地方をつなぐ場所にしたかった」と、坂口さんは話します。
その「つなぎ役=コンシェルジュ」は、多ければ多いほどいいと坂口さんは考えています。たとえば東京のお店では、坂口さんが忙しいときでも、常連さんが代わってお客さんに説明をしてくれました。NUPKAでも、それが日常の風景になることを願っています。
NUPKAを起点に、十勝の街が活気づいてほしい。それが実現したら、次に目指したいのは「歩ける街」です。高齢者が車を手放せなくて事故が増えたり、札幌のような便利な都市に人口が流出したりすると、地方は衰退してしまいます。
みんなが十勝のよさに触れられる環境をつくったあとは、より暮らしやすい十勝を目指して。坂口さんは、志を同じくする仲間とまた、新しい仕掛けをしていくのです。
HOTEL NUPKA
■所在地:北海道帯広市西2条南10丁目20-3
■電話番号:0155-20-2600
『HOTEL NUPKA』公式HP
NUPKA Hanare
■所在地:北海道帯広市西1条南10丁目18
『NUPKA Hanare』公式HP
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ライタープロフィール
仲野聡子
生まれも育ちも日本一人口の少ない鳥取県。高校卒業後に上京し、東京に20年ほど住んだのち、2017年8月に喜茂別町に家族と移住しました。羊蹄山麓の澄んだ空気や豪雪を楽しみ、日々人の温かさに触れています。
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