地域からの恩恵に自覚的でいたい。5周年を迎えたドット道東が辿り着いた「ローカル事務局」という役割|Domingo

地域からの恩恵に自覚的でいたい。5周年を迎えたドット道東が辿り着いた「ローカル事務局」という役割

ひと

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道東

広域連携を進める「地域の事務局」

ドット道東

――「個々の理想を実現する」と「それができる地域にする」を叶えるために、個人と地域はどのような関係であることが大切だと思いますか?

中西:いくら味が自慢のお店でも、お客さんが来てくれるのって、少なからず町からの恩恵を受けてると思うんですよ。例えば、札幌は人口が多いし、観光客もたくさん来ます。人口数千人の町と比べたら圧倒的に人の流れが多くて、お客さんに来てもらえる可能性は高いですよね。

それを里山に喩えると、木の実やキノコがたくさん取れる環境だと思うんです。だからといって、一方的に取るだけなのは搾取じゃないですか。環境の恩恵を受けているからには、豊かな自然を守り、木の実やキノコが増えていくための努力をすべきだと思うんですよね。

――ひたすら恩恵を受けるだけで、その環境を守ることに無頓着というのは、あまりに一方的な関係ですよね。

中西:そうそう。個人の努力によってお客さんが増えていくのは素晴らしいけれど、周りの環境からも恩恵を受けていることを自覚して、自分からも関与していくべきだと思うんです。そこに対して無関心だったり、「自分は関係ない」という姿勢でいてほしくないというか。

「その地域を維持したり、魅力的にしていくリソースって、誰が負担するの?」って話じゃないですか。もちろん税金によって負担される部分もありますけど、地域から恩恵に対して自覚的になると、もっと自分たちが暮らす環境をよくしていくためのアプローチが増えていくと思うんですよ。そういう余地ってまだまだたくさんあるし、それを積み重ねていくのが個人と地域の理想的な関係じゃないかなと考えています。

中西拓郎

野澤:地域によっては、「うちの町には何もないとか」とか「自分の会社は面白くない」と言う人もいるんですよ。だけど、どこの町にも会社にも面白いところはあって、僕らはそれを見つけるのが得意だし、いろんなクリエイターと連携して魅力を伝えることができると思っています。

道東で、誰よりもそれができるのは自分たちだと自負しているので、積極的に自治体や地域企業の仕事をしています。ドット道東の関係性やリソースを使ってもらって、地域に人が増えたり、産業が盛り上がっていくための手伝いをしていきたいですね。

中西:ちょっとした意識の変化でイノベーションが起こせることってあると思うんです。地域の資源を見つけることはシビックプライドを醸成してくれるし、扱う商品のオリジナリティに気づければ企業への当事者意識や仕事に対するモチベーションは上がるじゃないですか。そういう意識の変化は、着実に人の行動を変えると思っています。

――地域や会社のことが自分事になっていくと、自ずと活動にも熱が入りますもんね。

ドット道東

――クリエイティブの仕事や、コンサル的な動きなど、いろんな事業をされていますが、お二人はドット道東のことを、どんな会社だと捉えていますか?

野澤:仕事でも暮らしでも、「道東だからできる」とか「道東じゃないとできない」と思えるきっかけやコミュニティを作るのが、ドット道東という会社だと思っています。

「地方ではやりたいことができないから都会に行く」という動きは、どこのローカルでも起きていますよね。それってやっぱり寂しいし、ちょっとでも減らしたいと思っていて。「地方でもやりたいことができるから残ろう・戻ってこよう」と思う人が増えれば増えるほど、僕らの暮らしも楽しくなっていくんですよ。なので、挑戦する人の背中を押したり、やりたいことができる環境を作ることが、ドット道東がやるべきことだと考えています。

中西:クリエイティブとかコンサルって、あくまで僕らが持っている武器のひとつだと思うんですよね。それをしている会社と思われることも多いんですけど、僕としてはドット道東は地域の事務局とか組合みたいなものだと考えています。道東に対して前のめりな人たちが集まる組合で、「道東だからできる」とか「道東じゃないとできない」ことが増えていくための下支えをする事務局みたいな。

――なるほど。確かに事務局と言われると、ドット道東の多岐にわたる取り組みが理解しやすいですね。

中西:そうやって人と仕事の輪を広げていくことで、道東という広域での繋がりや経済圏ができていくんじゃないかなというのが、今考えている仮説です。僕は北見に住んでいるんですけど、釧路に友達や取引先ができると、その街のことを好きになるじゃないですか。そういう関係性が広がっていくと、人の動きが活発になり、地域のなかでお金が回っていくようになると思うんですよね。実際、僕らの周りでは小さいけど、そういう動きが生まれています。

住んでいる市町村とは別のレイヤーとして、道東という広域への帰属意識が生まれると、行動も変わっていくと実感しています。北見という里山にある資源や人は減っていくけど、釧路という里山との間に橋ができたら移動が可能になって、道東という里山ができるみたいな。そういう広域連携のイメージを常に持ちながら活動しています。

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