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Domingo編集部
デビューから63年、243号車の引退の花道に
札幌の発展の歴史を語る上で欠かすことのできない市電。100年以上愛されてきた市民の足ですが、かつてはどの車両も「デザートクリーム」「ライトグリーン」のツートンカラーでした。あの色使いの市電が記憶に刻まれている人は少なくありません。来年春に引退を控える札幌市電の243号車は1960年にデビュー。修繕・改修などは繰り返されていますが、車体や台車などがすべて北海道で造られている唯一の車両です。
「貴重な車両を、往年のツートンカラーに塗り替えて引退の花道を飾りたい」。そんな市電への愛、感謝の気持ちを込めて、道内の鉄道愛好家でつくる「北海道鉄道観光資源研究会」(永山茂代表)がクラウドファンディングを立ち上げました。
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来年3月に引退する243号
開発が進む札幌の街中に、懐かしい町の風景が帰ってくるかもしれません
令和3年(2021)にM101号車が引退して以降、あのツートンカラーの車両は1両も走っていません。「まもなく引退する伝統的な鉄道車両を往年の色に塗り替え、鉄道文化財としての歴史的な価値を蘇らせたい。そして多くの人たちの記憶にとどめていただければ」と代表の永山さん。
ある市電運転手は「市電は単なる交通手段としか見られていないと思っていましたが、市民の方々からこのような声が上がることをうれしく思います。ぜひ達成して、243号に華々しく引退してもらいたいです」と期待を胸にします。
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「北海道鉄道観光資源研究会」代表の永山茂さん(写真左)、メンバーで”街歩き研究家”としても知られる和田哲(さとる)さん(写真右)
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年季が入った運転席
243号は平成6年(1994)に現在のカラーに塗り替えられましたが、丸みを帯びた形と曲面ガラスの正面一枚窓はデビュー当時から「札幌スタイル」と認知され、後に登場した地下鉄南北線の初代車両にも影響を与えたとも言われています。
プロジェクトは6月30日まで実施され、目標が達成されればおよそ30年ぶりに伝統の姿に戻ることに。変わりゆく風景の中に、往年の勇姿が帰ってくるかもしれません。
クラウドファンディング『札幌市電リバイバルカラーPJ|引退車両を往年の色で送り出したい』
https://readyfor.jp/projects/sapporo243
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ライタープロフィール
雑誌・書籍編集者&ライター
山下 恭平
ラジオ局で番組制作の仕事をしながら、ミニコミ誌の制作や雑誌のライター業を始める。その後、編集者として出版社に入り、タウン情報誌をメインにさまざまな記事を手掛けてきた。好きなことは料理、山登り、川釣り、札幌の石碑。札幌市南区在住で、南区をこよなく愛している。
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