Domingo編集部
それは夏の時期限定、それも特別な時にだけ食べることができる高級メロン。 今回は、鮮やかなオレンジ色の果肉、ひとくち頬張れば幸せな甘みが口いっぱいに広がる『夕張メロン』について、探ってみましょう!
そもそも、『夕張メロン』ってなに!?
夕張市の言わずと知れた名産品である『夕張メロン』。名前を知らない人はいないのではないかというくらいの高級ブランドメロンですが、このメロンのことを詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか?
夕張メロンとして販売されているのは、『夕張キング』という品種のメロン。その品種名からも推測できるように北海道夕張市のみで栽培されています。
1株から収穫するメロンの個数を最大4玉と基準を設定し、その厳選された実に栄養がたっぷりいきわたるように手間暇かけて栽培されるメロンたち。
丹精込めて作られたメロンの中でも、生産者さん自ら行う厳しい検査を通過した選りすぐりのメロンだけが『夕張メロン』として私たち消費者の元に届けられるのです。
祖父の代から夕張メロンを作り続ける、生産者の太田研吾さんにお話をお聞きしました。
夕張市内102軒の生産者さんたちの手で作られる『夕張メロン』
ここ夕張で、夕張メロンを生産する農家さんは102軒(2021年現在)。1軒あたり、平均6,000株のメロンを栽培しています。
なにもしなければ多くの実がつくメロンですが、夕張メロンでは『1株あたり最大4玉』と基準を設け、その食味の良さを追求。
そもそも、夕張メロンがここまでのブランドを築き上げることができたのは、生産者さんたちの飽くなき『味の追求』によるものだと太田さんは話します。
「夕張メロンって栽培がすごく難しい作物だし、検査の基準も厳しい。これって全部、消費者の方に美味しく食べてもらうためのことなんですよね。お客さんが『おいしい!』って食べてくれたらそれで満足!夕張の農家さんみんな共通してそう思ってると思います」
『夕張メロン』ができるまで
誕生してからの60年間、生産者さんたちがとことん『味』を追求し続けてきた夕張メロン。
栽培がとても難しいと言われていますが、一体どんなふうに栽培されて消費者の元に届くのでしょうか?
その栽培工程を簡単な図で表すと、こんな感じ。
まずは『種まき』。太田さんの場合だと2月中旬〜5月中旬頃まで小分けに、3ヶ月間かけて種まきをします。
タイミングずらしながら植えることで、3ヶ月間安定的に出荷できるよう、また作業を分散できるように栽培しています。
発芽後の様々な作業を経て、1ヶ月後に苗が完成。種まきからだいたい1ヶ月後に苗を植える『定植』の作業をするのが、夕張のスタイルなのだそう。
定植してから行うのが、『摘芯(てきしん)』という聞きなれない作業。
「メロンは、放っておくと四方八方につるが伸びていく作物なんです。『摘芯』は、農家が目指すメロンに導くために無駄なつるを折ったり、葉っぱをとったりする作業。『メロン栽培の全て』と言っても過言ではないくらい大事な作業です」
その『摘芯』の作業を、定植から1週間後、2週間後、3週間経たないうちにもう1度、計3度行うのだそう…!
1株行うのも大変そうな作業なのに、太田さんは合計1万株も栽培しているのだからこの作業の大変さは想像してもしきれません。
3度の摘芯の後、定植から約1ヶ月後に行うのが、メロンが実をつけるのに欠かせない『交配』の作業。夕張では、蜂に受粉を手伝ってもらう『自然交配』という方法でこの作業を進めています。
蜂を入れる直前と蜂を入れている最中、さらに2度の『摘芯』を行います。ここでの摘芯は最難関。メロンの出来を大きく左右するのだといいます。
「『着果芯摘み』っていうんですけど、将来メロンがなるべきつるを決めて、そこに養分を集中させるように摘芯する、すごく難しい作業なんです。ここで失敗してしまうと全滅もあり得るような、春先から準備してきたのがそこで決まるって言っても過言でないぐらい重要な作業なんです」
この作業をうまく乗り切り交配を終えると、次は『摘果』の作業を行います。メロンとして育てる実をここで決め、それ以外の実を摘み取ります。
「親指の先より一回り大きくなったくらいの段階で、もう将来メロンがどうなるかって姿がわかるんですよ。そこで完全に『今年はこの4つで勝負するぞ』って決めるんです。それ以外の実を摘み取るのが摘果の作業。同時進行で、決めたメロンの下にマットを敷く作業も行います」
そこから行うのが『肥培管理(ひばいかんり)』。メロンを大きく美味しく育てるための管理です。温度や水の管理、追加で摘芯作業をするなど、ここから先は状況によって、人によって作業内容が変わります。
「ここからはもう、農家の経験と知識と技術を総動員して作業します。腕の見せ所としか言いようがないですね。102軒の生産者がいますけど、全く同じ作業をするっていうのは誰もいないと思いますね」
ここまで、ミスが許されない多くの工程で作業を的確に行い、種まきから約105日でやっと収穫。
2月中旬に種をまいたメロンは、6月の上旬〜中旬ごろに収穫の時期を迎えるのです。『味』にとことんこだわった夕張メロンは、こんな風に作られていたのです。
作業はここで終わりではありません。
収穫したメロンを各農家で箱詰めし、生産者の代表として選ばれた『検査員』が厳しい基準に照らし合わせながらひとつひとつ手作業で検査を行います。厳しい検査に合格した選ばれしメロンたちが、『夕張メロン』として消費者の元に届くのです。
夕張メロンの特徴は、その果肉の柔らかさと甘み、そして芳醇な香り。収穫から食べごろまでの期間が3~4日と短いので、検査・発送は手早く行われます。生産者さんたち、JA夕張市のみなさんのおかげで、とってもおいしい状態で味わうことができていたのだと知って、胸が熱くなりました。
『夕張メロン』は栽培から収穫、検査に至るまで、生産者の『手』によって行われ、『美味しさ』が作り出されているとっても貴重なフルーツ。栽培背景を知れば、値段が高い理由も理解できるし、生産者さんたちに特大の感謝をしながら食べたくなります。
今年よりも来年、美味しいメロンを作りたい!太田さんの想い
とっても難しい夕張メロン栽培を、『難しいからこそ面白い』と話す太田さん。
夕張の地で、『味』にとことんこだわる夕張メロンを作り続ける太田さんに、今後の展望をお伺いしました。
「来年、今年よりももっと美味しいメロンを作りたいなっていう想いが常にあります。過去の自分より少しでも美味しいメロンを作れるようになっていたら、それは成長だと思うので。
そして、産地として夕張メロンを絶やさないようにやっていきたいと思います。だからと言って、単純に数だけ増やして品質を落とすようなことは絶対したくない。自分の祖父や父、周りの農家さんが築き上げてきたブランドを引き継いでいく責任も感じます。
夕張メロンがここまでブランドとして確立されたのは、形がいいとか栽培体系がどうだとかは関係なく、ただただ『食味』がよかったから。だから、何より味を落とさないことを一番大切にしていきたい。食味をさらに向上させて、お客さんの期待を裏切らないものを作りたいなと思います。」
そんな熱い想いがこもった夕張メロン、来年の夏にはぜひ現地で味わってみてくださいね!
【一口メモ】
夕張メロンが生まれたのは、いまから60年前、1961年のこと。今でこそここまでのブランドを築き上げた夕張メロンですが、青肉メロンが一般的だった当時は、『かぼちゃメロン』と揶揄されることもあったのだとか。
夕張の農家さんたちの不屈の精神によって苦しい時代を乗り越え、全国で愛されるようになった奇跡のメロンの歴史は、JA夕張市ネットショップのサイトを読んでみてくださいね。
JA夕張市ネットショップ『夕張メロン誕生物語』