鮭マスの遡上 繋がれていく命のバトン【連載「中道智大のしべちゃ日和」(12)】|Domingo

鮭マスの遡上 繋がれていく命のバトン【連載「中道智大のしべちゃ日和」(12)】

連載

標茶町

みなさんこんにちは。中道智大(なかみち ともひろ)です。僕が住む標茶(しべちゃ)町では一気に冷え込みが進み、いよいよ秋も本番になってきました。さて、今回は鮭マスの遡上についてお話したいと思います。

サクラマスの遡上

9月上旬、標茶町にサクラマスが遡上してきました。今年は雨が多かったせいか、海岸で獲られずに乗り越えてきた個体が多く、僕が見た川でも所狭しとサクラマスと鮭が遡上してきていました。

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婚姻色のサクラマス

サクラマスは、オホーツク海沿岸から朝鮮半島、そして、北海道などの北日本を中心に生息。川で生まれた「ヤマメ」が海に降った「降海型」の個体を指します。逆にそのまま川に残り、生涯を終える個体は「陸封型」と呼ばれています。サクラマスは生まれた川から海へと旅立ち、幾度とない困難を乗り越えてオホーツク海を生き抜き、また生まれ故郷に戻ってきます。

そして、繁殖期のオスは写真のように婚姻色(こんいんしょく)という桜色に変わります。サクラマスの名前の由来にもなっており、非常に美しい色合いです。

シロサケとの争いも

サクラマスと同時期に、シロサケも遡上してきました。シロサケは私たちが一般的に鮭と呼んでいる種類で、サクラマスよりもひと回り大きい個体が多いです。

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シロサケ

この時期の川はシロサケとサクラマスが混じり合い、時にはサクラマスとシロサケが喧嘩をし、産卵する場所を奪い合ったりする光景も。サクラマスもシロサケもオス同士で激しく争い合うので、背びれや尾びれが段々ボロボロになってきてしまいます。その姿はとても痛々しくも見えますが、同時に命の輝きの美しさを感じます。

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噛みつこうと上に乗るシロサケ。下にはもう1匹の鮭がいます

命の旅を終えて

繁殖が終わると鮭たちはその命を全うします。専門家の方に聞くと、サクラマスや鮭は海から川に入り、それ以降は一切の餌を口にしないそう。海で蓄えた栄養と自らの体のみで川を遡上し、最後に激しい争いを繰り広げ、残った者だけが子孫を繁栄することができます。

そうしてより強い遺伝子を後世に残し、自らは散っていきます。ずっと昔から延々と続く、地球の約束が目の前に広がっていました。僕は夢中でシャッターを切りながら、彼らの命の輝きを最後まで見届けたいと思い、連日通いました。

そんなある日、ボロボロになって命を終えた1匹の鮭と出会います。まだ力尽きて数時間程度でした。僕は手を合わせ、写真を撮りました。

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命を終えた鮭。ボロボロに傷ついた体が戦いの激しさを物語っていました

この命も決して無駄になることはなく、数日後には跡形もなくなくなっていました。きっと狐や熊、猛禽類たちが餌として持っていったのでしょう。そして残った食べ残しも、細かな虫やさらには微生物たちの養分となり、森が繁栄していきます。

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川岸に宿る命。自然には誰にも見られない儚さや美しさがあります

生まれた場所から海へ飛び出し、最後には生まれた場所で次の子孫の為に死んでいく。自分もそんな風に、次世代のために今の景色を少しでも多くの人に伝えられたらと思っています。こんな光景がすぐ身近に見られる標茶町は、やはり僕にとって大切な場所なのです。

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繋がれていく命。倒れた倒木からも命は芽吹いていました

終わりに

いかがでしたでしょうか。今回は、僕の大好きな自然や動物たちに焦点を当ててご紹介させて頂きました。自然の中で、季節や日々の移ろいを感じれることは、私たちは決して暦の上を生きているのではないという、大切な約束を思い出させてくれます。

連載も12回を数え、開始から約1年が経過しました。いつも読んでくださっている皆様には大変感謝しております。今後ともどうぞよろしくお願いします。

筆者プロフィール

標茶町地域おこし協力隊・写真家・映像クリエイター 中道 智大

1988年千葉県野田市出身。小さい頃から動物や自然が大好きで20代の頃はドッグトレーナーとして様々な犬の訓練に携わる。5年前から自然と動物達の写真と映像制作を始める。現在、北海道標茶町の狼20頭が飼育されていた森で犬4頭と自然暮らしをしている。『人と動物の関係性』をテーマに各SNSにて作品を発表中。

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