標茶町の塘路湖で行われている「べカンベ採集」【連載『中道智大のしべちゃ日和』(11)】|Domingo

標茶町の塘路湖で行われている「べカンベ採集」【連載『中道智大のしべちゃ日和』(11)】

連載

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標茶町

食用としてのべカンベ

冒頭に述べた通り、べカンベは食用として採集されていました。今回は採集したべカンベを特別にいただきました。まずは茹でて直接殻を剥ぎ、実を食べます。

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採集したべカンベ

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殻を剥いたべカンベ。白いのが実で食べられます

このべカンベが本当に絶品!食感や味は栗に近く、ほんのりと甘い香りが口に広がり、とても上品な味です。実も柔らかいものから歯ごたえがあるものまで様々で、子供たちのおやつや大人の枝豆感覚でどんどん食べられます。

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べカンベのおしるこ

そして何といっても最高に美味しかったのがべカンベのおしるこ!こちらも土佐さんに作っていただいたのですが、べカンベの自然の甘さがぎゅっと濃縮されていてとっても美味しかったです。(個人的には普通のおしるこよりも好きでした。)お孫さんたちにも大好評だそうで、何度でも食べたくなる、とっても美味しいべカンベのおしるこです。

存続するか否かの狭間にあるべカンべ採集

今回、僕が土佐さんにべカンベ採集の撮影を依頼したのは完全に個人的な理由からでした。塘路に住むアイヌの方々から脈々と続いてきたべカンベ採集が今、存続するか否かの狭間にある。きっと100年か200年先にはもしかしたらこの光景が過去のものになってしまうかもしれない。そう思って2022年の今の塘路を記録したいと思ったことがきっかけでした。

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塘路湖のべカンベ採集の様子

きっと今僕は、100年前と同じ光景を見ているのかもしれないとふと思いました。時代は変わっても採集法や技術が変わるわけでもなく、脈々と続いてきた塘路湖のべカンベ採集の歴史です。

「今」を生きている土佐さんを、そうした歴史的な観点から撮影するのは大変失礼なことなのかもしれないと思いました。そして記事にすることにもとても戸惑いがありました。しかし、土佐さんから今回の記事化を快諾していただき、僕の気持ちは固まりました。僕が目にした光景は、今行われていることであり、土佐さんの毎年のライフワークです。決して過去のものではなく、歴史がありながら「今」行われていることです。その文化と触れ合えたこと、写真に撮れたこと、べカンベを食べられたこと、全てが僕にとって貴重な経験となりました。

撮影の合間もとても気さくにお話をしてくださり、撮影もスムーズに進むことができました。べカンベまでご馳走になってしまい、本当に土佐家のみなさまにはお世話になりっぱなしです。本当にありがとうございました。

終わりに

いかがでしたでしょうか。標茶町には、まだまだこのような歴史ある文化や物語がたくさんあります。僕にとって、それらをしっかりと記録していくことは自分の責務だとも感じています。移住者の僕ですが、移住者だからこそ、その土地に興味を持ち、いい意味での外からの視点で外部に発信できるのではないかと考えています。今後もこういった取材は続けていこうと思っています。

来月には塘路湖も紅葉に染まります。歴史ある塘路湖にぜひ皆様一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

今回ご紹介させて頂いた土佐さんは普段はアウトドアカヌー事業もされております。べカンベのお話はもちろんのこと、塘路の様々な動植物についても詳しく解説してもらいながら釧路湿原源流を下っていける貴重なツアーも行っておりますので、ぜひ行ってみてくださいね。

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SPOT レイクサイドとうろ

■所在地:川上郡標茶町塘路原野北8線73番地
■営業時間:9:00~17:00(冬季は9:00~16:00)
■電話:015-487-2172
「レイクサイドとうろ」の詳細をDomingoで見る

筆者プロフィール

標茶町地域おこし協力隊・写真家・映像クリエイター 中道 智大

1988年千葉県野田市出身。小さい頃から動物や自然が大好きで20代の頃はドッグトレーナーとして様々な犬の訓練に携わる。5年前から自然と動物達の写真と映像制作を始める。現在、北海道標茶町の狼20頭が飼育されていた森で犬4頭と自然暮らしをしている。『人と動物の関係性』をテーマに各SNSにて作品を発表中。

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